雇用者保護も行き過ぎが心配

働く人を保護する動きが急速に強まっていますが、行き過ぎるのもどうかなと思います。

 

牧羊犬
牧羊犬

創業者の人にとって、従業員を雇用するのはとても大変です。

よくお話をするのですが、起業して経営者となった瞬間から、誰もあなたを守ってくれなくなります。雇われている人は徹底的に守られますが、雇う人は誰からも守られません。

 

雇用者、特に正社員(期間の定めのない雇用)に対する保護が強くなってきています。

 

元々、日本は世界でも有数の、強い解雇制限がある国です。事実上、会社の都合で正社員を解雇することはできないと言ってよいでしょう。雇ってしまえば、仮に仕事ができない人でも解雇できず、定年までは雇い続けることになります。しかも、定年年齢が引き上げられていきそうです。

 

雇用者保護では、最近は残業代の支給というのが大きなテーマです。例えば、勤務時間中にダラダラ働いて夕方になっても帰らないでタイムカードに残業3時間つける社員にも、残業代は払わなくてはいけません。朝のラジオ体操も夕方の片付けも全て勤務時間です。以前はよくあった管理職だから残業代を払わなくていいというのも、もう認められません。

万が一、未払いだった残業代を支払ってくれと言われたら、過去2年(民法改正後は5年になるかも知れない)分を支払うことになります。しかも、遅延保証金とか付加金をつけなくてはならない場合もあります。

 

雇用者保護も大切ですが、過保護が過ぎると大変です。大企業であればともかく、中小企業では正社員雇用はリスクが大きすぎます。

 

正社員雇用の代わりに、有期労働契約で雇用していましたが、無期転換ルールで5年以上継続して雇用していると、無期雇用(正社員)に転換が義務付けられます。

そこで派遣社員を使うということになったりします。これも特定派遣が廃止になります。特定派遣の廃止は派遣を受けるときも不都合ですが、派遣する側になることが多い中小企業にとってもダメージです。

 

大企業は解雇制限を緩めることを求めていますし、大きな方向性としてはそうなりそうです。

しかし、個人的には日本の解雇制限の厳しさ(事実上の終身雇用制)を維持したうえで、雇用者保護はそれとバランスを取るというのが適当だと思っています。

解雇しないというのは、新卒採用としたら50年間雇用するということです。つまり、経営者は企業100年の計を持っている必要があります。無茶な話のようですが、このくらいの気概がある会社が増えることが望ましいと思います。そのとき、雇用されている者が働くこと自体に楽しみを感じることができる会社になっているかどうかです。