カズオ・イシグロの父と竜巻と

ノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロさんの父・石黒鎮雄さんは海洋学者です。

 

 

Shizuo Ishiguro with his electronic storm surge modelling machine, 1968
Shizuo Ishiguro with his electronic storm surge modelling machine, 1968

私も、カズオ・イシグロ?って誰だ??と思った一人です。多くの著作が日本語で読めるうえに、ベストセラーにもなっている有名な作家なのですが、残念ながら読んだことがありませんでした。

 

カズオ・イシグロさんの父は、石黒鎮雄という海洋学者です。昭和18年に九州工業大学(当時は明治専門学校)の電気工学科を卒業して気象研究所に奉職しました。その後、長崎海洋気象台に転勤になって、海の波の研究をします。長崎に住んでいた昭和29年に、長男・一雄が生まれています。

 

昭和35年(40歳のとき)に、イギリス政府から招致されて英国国立海洋学研究所に勤務するために家族とともにイギリスに移住します。油田の開発が進んでいた北海の高潮の研究などで成果を出しています。写真にあるように、コンピューターがない時代に電子回路を開発して高潮の力学的な解析をして、予報法を見つけたそうです。

☞ Understanding storm surges in the North Sea: Ishiguro’s electronic modelling machine

海洋学に大きな功績を残され、平成19年に87歳で亡くなられています。

 

この昭和18年の九州工大(明専)では機械工学科を藤田哲也が卒業しています。Mr.Tornado と呼ばれ竜巻の研究で知られる気象学者です。大学卒業後は小倉中学の代用教員を務めていましたが、原爆投下直後の長崎市の現地調査に招聘されます。このときの経験が、後に「ダウン・バースト」の発見につながったのだそうです。

 

石黒鎮雄と藤田哲也、学科は違いますが、当時の明専は全寮制で1学年が200人くらいですから、二人には何かの交流があったかも知れません。ちょっと、面白いですね。