「人口減少時代の土地問題」吉原祥子著(中公新書)を読んでみました。
帯に書いてあるように、日本では持ち主のわからない土地がたくさんあって、その総面積が九州の面積を超えています。
ちょっと数字で示すと、九州の面積は約3.7万㎢です。日本の国土は37.8万㎢ですから、国土の約10%です。
日本の国土の地目別面積は、森林が66.3%、農地が11.9%、道路・水面・河川が7.2%、宅地が5.1%、原野が0.9%、その他8.6%です。森林の面積が多くを占めているのが、山がちな日本列島の特徴です。
このうち、私有地は16.2万㎢と国土の43%しかありません。農地や宅地は私有地ですが、森林や原野で私有地なのは1/4ほどだからです。それでも私有地面積の半分は山林です。
この私有地の20%以上で所有者がわからない状況になっています。もちろん、土地の資産価値が大きい都会の宅地ではほとんどの土地で所有者はわかっています。地方の山林や農地で、持ち主がわからない土地が増えているわけです。
こうなってしまった原因は、日本では土地の所有権が非常に強いこと。相続の権利も強いので、法定相続人だけでも多数になること。権利関係を整理して、土地の所有権を確定させるのには手間もお金も掛かること。土地の登記が任意であり、土地取引の制約要件でもないこと。相続放棄して国や自治体に土地を寄付しようとしても、受け取ってもらえないこと。・・・
たくさんあって、一朝一夕には言えません。
結果として、日本の土地は誰のものかがわからない状況になっています。このため、道路を作ったり橋を掛けたりするときに困ります。農村で農地を集約しようとしても耕作放棄地の所有者がわからないとできません。都市部でも空き家や空き地が放置されたままです。東日本震災の復興が土地所有権の確定ができずに数年に渡って遅延する事態もおきました。
詳しいことは、この本を読んでもらいたいのですが、土地に関する個人所有権については一定の基準で制限をすることが必要です。驚くべきことに豊臣秀吉がおこなった太閤検地の仕組みが続いている状況です。
1951年にはじまった地籍調査は、今のままでは完了するのが西暦2140年という予想です。問題点を整理したうえで、新たな検地を速やかにおこなわないといけないと思います。