中国の大気環境と日本のエネルギー安保

中国で石炭火力発電所の新設を抑制していることは知っていましたが、既存の発電所の廃止も急速に進んでいることに驚きです。

 

石炭火力発電所
石炭火力発電所

2016年の統計で、中国の1次エネルギーは62%が石炭、19%が石炭、6%がLNGです。これは、中国が世界最大の石炭生産国(世界生産の46%)であることから、当然です。

しかし、石炭火力発電所は適切な除害装置を設置して運用しなければ、大気汚染の原因になります。よく知られるPM2.5の発生源になります。

 

中国が石炭火力発電を抑制しようとしているのは、大気環境の保全以外にも複数の目的がありそうです。一つは、石炭資源を保全ですが、これは日本が反面教師ですね。日本でも、1950年代までは石炭産業が華やかだったのですが、資源を枯渇させてしまいました。

もう一つは、中東からのLNG輸入の経済的、技術的基盤が整ったということでしょう。

 

そうなると心配なのは日本のエネルギー事業です。同じく2016年で、日本の一次エネルギーの22%がLNGです。石油が41%、石炭が27%です。石炭は主にオーストラリアからの輸入で、LNGや石油は中東からの輸入です。

 

2015年の世界のLNG輸入で、日本のシェアは35%に上ります。東日本震災に伴う原子力発電の停止によって、日本はLNGを買い漁っている状況です。貿易シェアは量では35%ですが、金額では50%を超えます。日本が輸入する(輸入できる)LNGの価格は、欧米の価格の1.5~3倍です。これでも価格差は縮小傾向ではあります。

 

今後、中国でのLNG需要が増大すると、もともとアジアでのLNG需要は増加傾向だっただけに、需給は更に逼迫します。日本がLNG市場で買い負けする事態になれば、大きな社会問題になります。原子力発電所の本格的な再稼働は困難ですし、再生エネルギーもできることは限られています。そうなれば、ネガワット=省エネルギーに活路を見出すしかありません。一層の推進を目指していきたいところです。