農林水産品の輸出額1兆円は達成できるか

昨年(平成28年)の農林水産品輸出額は7504億円。平成31年に1兆円が目標です。

 

農林水産品の輸出額の推移
農林水産品の輸出額の推移

農林水産品輸出1兆円という目標は、現在の安倍政権(平成24年12月発足)が掲げました。

平成24年の実績が約4500億円ですから平成28年の中間目標7000億円、平成32年を最終目標として1兆円と決めました。ところが、中間目標の7000億円が1年前倒しで平成27年にクリアされたので、最終の目標年を1年前倒しにして平成31年にしたというわけです。

 

グラフで分かるのは、農林水産品の輸出が急激に伸びてきたという事実です。為替(円安誘導)政策の効果というは確かに大きいのですが、日本の農林水産品、食品の人気がアメリカやアジアで高くなっているということも事実です。

一方で、平成28年の伸びが鈍っている(+0.7%)のが気になります。今年上半期は再び伸び率が上昇(+4.5%)してきましたが、目標の1兆円には”黄信号”のように見えます。

 

昨年の伸びが鈍った要因としては、水産品が減少したことが目につきます。平成27年の2767億円から2640億円と、127億円(-4.6%)の減少です。この要因としては、漁獲量の減少があげられます。日本の水産品輸出の現在のエースはホタテ貝ですが、この水揚げが減りました。過去はエース格だった、まぐろ・かつお、さけ・ます、いか等、いずれも長期低迷です。

 

地球温暖化による海水温の上昇で近海漁業のダメージは大きいですし、近海を離れての漁業も国際情勢から厳しさを増しています。陸上養殖を含めて養殖技術をブラッシュアップして、漁獲高を上げていきたいものです。養殖漁業のカギは餌です。当たり前ですが、魚は海に生きるものを餌にするのですが、その餌が足りません。陸で生きる餌(野菜や肉)を使って魚を育てるようになっていくようになりそうです。

 

農産品の伸びも昨年は鈍りました。平成27年の4431億円が、4593億円(+3.7%)です。この要因は、野菜果実のエースであるリンゴとながいもの不作(台風の影響)と、為替(円高傾向に触れた)の影響です。

 

農林水産品の輸出は、気象や気候に左右されますから、政策だけではうまくいきません。六次産業化や農商工連携を強化して加工食品やその他の加工品として、海外市場で安定した人気を維持できる商品開発と広報が大切です。