獣医学部新設で誰も触れないこと

民進党も自民党も文部科学省も、何故だか誰も触れないのは「定員超過」問題です。

 

定員超過のモルモット
定員超過のモルモット

以前のブログでも書いたのですが、獣医学部の新設とは「定員の増加」に他なりません。

☞ 2017/05/21 獣医学部は要らないのか?調べてみた

 

獣医学部を新設しても、獣医師になるには最低でも6年以上かかる。ましてや、鳥インフルエンザや口蹄疫に対処できるようになるには10年以上かかる。・・だから、獣医学部の新設は意味が無い。という珍説を述べる人がいます。

 

獣医学部の新設を獣医師が足れているとか、足りていないとかで議論するのではなく、大学の獣医学部の定員に視点を置いてみるべきでしょう。

日本には16大学(国公立11と私立5)に獣医学部があって定員は930名です。しかし、新卒で獣医師試験を受けるのは直近6年の平均で1032人です。獣医師試験の合格者は同じく6年間平均で1009人です。単純におかしいでしょう?

 

一目瞭然で、各大学(特に私立大学)は定員を大きく超える学生を受け入れています。私立5大学では、卒業生でさえ定員の1.15倍です。(入学時は1.2倍超えかな?)

近年、私立大学の定員超過は問題になっています。建前は「教育の質の改善」ですが、実際は首都圏・京阪神の人気校・人気学部に学生が集まって、地方大学の経営が成り立たたないこと(学生の流出=都会への人口集中)への社会的な危機感です。そこで、文科省は入学定員超過による私立大学等経常費補助金の不交付の基準を厳しくする(従来は大規模校1.2倍以上を段階的に1.1倍以上)など、定員超過の抑制に取り組んでいます。

 

私立大学獣医学部は長年に渡って定員超過を続けています。本来、これを是正するように取り締まるのは文科省の仕事です。大学側は、定員を増やせば、それに見合った施設や教員が必要ですが、定員超過を文科省を目こぼししてくれれば、人気がある学部で学費も高額なので、大きな利益が確実に見込めます。

新設定員160人が大きいという話もありますが、それに見合う施設と教員を揃えるということです。既存の大学が定員120人のところに160人を受け入れ続けている方が問題です。

 

定員超過で利益を上げたい私立大学、獣医師不足状態を続けて競争を避けたい獣医師会(幹部は私立大学出身が多い)、天下り先を確保したい文科省、私大や獣医師会から献金や便宜を受けている政治家、という岩盤が、50年以上に渡る堅い仕組みをつくっていたわけです。

つまり、地方への獣医学部新設は、文部科学行政における国家戦略そのものです。

 

それにしても、文科相が「出処のわからない文書の存在を役所で調査することなない=出処がはっきりしていれば調査する」と言っているのに、民進党は何故出処を明かさない(明かせない)のだろうか?