避難口は他にもある~危機への心構え

劇場やデパート、地下街などには、地震や火災が発生した場合に備えて、必要な数の避難口が設けられています。

 

非常口
非常口

避難口の設計基準としては、「施設の中に入ることのできる最大人数の全員が7分以内で外に避難できる。」とかです。施設内移動を1.0m/秒、避難口の大きさによって流出係数を1.0人/秒とか設定します。

 

仮に、最大定員1200人の劇場を考えます。あなたが避難口から120mの位置にある椅子に座っているとします。この劇場には避難口が6カ所設けられているとします。あなたが避難するために必要な時間を計算してみると、避難口に到達するのに120秒、その避難口を1200÷6=200人が使うとして200秒、合計して最大320秒=5分20秒といった値になります。無事に7分以内で避難完了です。

これは、あなたがその避難口で他の避難者を全て逃がした後で逃げるという献身的な行動をした場合です。

 

現実の災害の場合に避難が遅れる最大の要素は、「1200÷6」にならないことです。避難者は均等に6つの避難口に向かわないのです。設計上は避難口毎に1.5とか2.0とか避難者が集まりやすい避難口には係数を掛けます。「1200÷6×2.0=400人」とかです。

 

しかし、実際の災害では一つの避難口に半分以上、8割とかの人が殺到してしまうことがよくあります。他に悠々と避難できるところがあるのにです。

前の人が向かっている避難口に続くという心理、多くの人が向かっているからその避難口が優れているのではないか?、あるいは、人が向かわない避難口は外に何か障害があるのではないか?といったという気になります。

 

きちんとした施設であれば、どの避難口を使っても同じ程度には安全なはずです。皆が同じ避難口に殺到しないほうが安全性は増します。

 

これは、国際的な金融危機の場合でも同じです。2008年を中心にしたリーマンショックから10年が経過しようとしています。歴史上、世界規模の金融危機は10~15年程度の間隔では発生していますから油断は禁物です。地震の発生と同じです。

そのときも避難口は一つではないので、みんなと同じところに殺到しないで、他の避難口から逃げることも考えたいものです。