「原論」が世界第二位のベストセラーという説

古今東西のベストセラーは、1位が「聖書」、2位が「論語」、3位は「老子」で固まっていると思っていましたが、話を聞くと、2位は「原論」という説のほうが有力そうです。

 

「原論」は、エジプト・アレクサンドリアの数学者エイクレイデス(英語読みでは、ユークリッド)が編纂した(と言われる)数学の教科書です。紀元前4世紀、今から2300年以上前にギリシャ語で書かれています。もちろん、原本が残っているわけではありませんし、印刷技術が無い時代です。写本の形で継承されて、基本的な体裁は変わらないままに、アラビア語やラテン語など多くの言語に翻訳されました。

 

「原論」は、なんと18世紀になるまで、地域によっては20世紀初頭まで、ヨーロッパ社会で広く初等数学の教科書として使用されていました。ニュートンもガリレオも「原論」で数学をを学びました。アインシュタインの愛読書でもありました。

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近世までの「論語」の普及が漢字文化圏に限られるとすれば、「原論」が世界第二位のベストセラーであると推定出来るのも当然です。

 

「原論」は全13巻からなっています。念のため繰り返しますが、日本列島では弥生時代前期に当たる頃にギリシャ語で書かれた数学の教科書です。

 

「原論」の冒頭に書かれているのは、現在の中学数学の教科書と全く同じです。1)点に部分(大きさ)はない。2)線に太さ(幅)はない。3)線分の端は点である。4)直線はその上の諸点に対して等しく置かれている線である。

  

命題1
命題1

「原論」の第1巻は、直線平面幾何に関する章で、全部で48の命題が記されています。

 

最初に書かれている命題1は、線分ABを含む正三角形は、点A、点Bをそれぞれ中心として、線分ABの長さを半径とする円の交点Gと点A、Bを結ぶとできる。

現在でも中学数学の最初の頃に習いますね。

 

命題48
命題48

そして、第1巻の最後の命題48は、三角形の2辺のそれぞれの平方の和が、残り1辺の平方の和と等しいとき、その三角形は直角三角形である。ご存知の、ピタゴラスの定理(逆命題)です。

命題1は中学1年生、命題48は中学3年生のレベルです。

 

何度もしつこいですが、書かれたのは2300年以上も前ですよ。宇宙人でも来ていたのではないか?と真面目に思いますよね。人類の叡智の可能性を感じる書物でもあります。