土地取引の際、土壌汚染問題にどう対応するか

土壌汚染がある土地取引の経験(売主)があります。豊洲市場や森友学園で話題になっていますが、マスコミでは、かなりいい加減な話が言われているので、ちょっと解説します。

 

先ず、大前提として日本の場合、土壌は汚染されているほうが多いということを知ってください。日本には108の火山がありますから、火山のマグマから滲み出してくるヒ素や鉛など重金属はどこにでもあります。気がついていないだけで、ある日突然、自然由来の土壌汚染が明らかになります。また、東京をはじめとする日本の都市では、多くの土壌が油で汚染されています。これは、第二次大戦の焼夷弾による空襲とその後の火災が原因です。

まとめると、日本の国土の大部分は(自然由来を含めると)土壌汚染地帯です。

 

土壌汚染による被害を過小評価することは謹むべきですが、過剰に反応することはナンセンスです。合理的に、科学的に、対応をすることが必要です。

テレビでもときどき流れますが、土壌汚染物質の含有量基準は汚染された土を体重1kg当り100㎎(体重60㎏の人なら6g)を70年間毎日経口摂取した場合に有害影響が出る最低の量で決まっています。・・つまり、非常に厳しい基準です。

 

土地の取引においては、土壌の汚染の状態を把握しなければなりません。ベストは専門の調査機関に依頼して、必要な調査や分析をして報告書を作成してもらうことです。私たちは、そうしました。

そして、汚染が発見されたら必要な対策を取ります。

 

具体的には、汚染の除去ですが、テレビで「売主が全て除去してから取引をするのが常識だろう」という話がよく聞かれますが、普通は違います。土地は、買主が何かの建設のために購入するのですから、その建設と同時に汚染土壌の搬出などの対策をするほうが合理的です。私たちも、そうしました。具体的には、土壌対策費分を見積もって値引きして売りました。

もちろん、実際にどれだけの費用が掛かったのかは、買主側のことですから知りません。(関西空港と森友学園のケースと同じです。)

 

土地の売買契約においては、以下の注意が必要です。

1.売主は、土壌汚染の懸念や状況について、正直に告知をすること。

2.瑕疵担保責任の成立要件を明確にすること。売主としては、完全な免責がベストですが、結構難しいと思います。土壌汚染の定義、責任期間などの特約をきちんとつけることです。

その他、所有権の移転時期の設定、買主の使用用途の制限、なども検討します。

繰返しますが、日本の大半は法律上では土壌汚染地帯ですから、安易な取引にはリスクがあります。

 

土地取引の鑑定評価ですが、不動産鑑定士に任せても構わないのですが、先に言ったように土壌汚染についての専門調査機関の調査結果をベースにすることが大切です。

その際には、汚染対策コストに心理的嫌悪感(スティグマ)を加味する必要があります。

 

汚染の状況や対策の方法によって千差万別ですが、汚染対策費用は5万円/㎥くらいが標準になります。

森友学園の場合、汚染土壌の量が1万1100㎥という話ですから、5億円強です。これに、スティグマ分と売主の将来の免責分を含めて8億円というのは、国から学校法人への売却という公共性も加味すれば、およそは妥当だと思います。

売買を検討していたときは、買主がまともな学校法人だと思っていたのでしょうから。

もちろん、契約内容に忖度分がいくらか含まれていたのかも知れませんが、それを金額換算するのは難しそうですね。