国会審議の空洞化を他山の石とする

「籠池劇場」と呼ばれていますが、確かにエンターテイメントとしては面白いですね。

 

ただ、国民負担166兆円、政府歳出97兆円、について議論するはずの国会の予算委員会が、ワイドショー化しているのは、ちょっと困ったものです。

以前も書きましたが、1日当たり4億円の経費を掛けている国会なのですから、何とかならんか?というのが国民の声です。【追記:民進党の小西議員によると1日6億円だそうです。】

実際、予算委員会で質問していた議員が、すぐテレビのワイドショーに移動して話していますから、国会がバラエティー番組の前説のようになっています。

 

ただ、確かに登場人物のキャラが立っていて、面白いので視聴率はとれます。主役の方が「事実は小説より奇なり」と言っていましたが、一面ではそういうところもあります。

お互いに相手の話を無視して掛け合いをする(ボケとツッコミの区別が曖昧)なのは、昭和の漫才スタイル(例えば、やすし・きよし)です。我々世代には、結構親和性があります。

 

国会審議と言えば、本来は本会議でおこなわれるものです。しかし、近年は本会議はセレモニーとして形骸化されていて、そもそも短時間しか開催されません。現在開いている通常国会では30回くらいの本会議がありますが、短いのは数分です。記名投票で賛否がどうなるかと、ワクワクするような場面もありません。

 

そこで、テレビでやっている予算委員会などの委員会でしっかり議論すればよいのですが、これがそうなりません。現在の委員会では、実質審議はおこなわれておりません。

自由に意見を言う場ではないのです。つまり、本会議がセレモニーになったので、本会議的なことを委員会でやっています。

与野党の事前打合せによって、質問順と時間が決まっています。事前通告をした質問に、内閣が応える型式ですから、審議にはならず、政府対野党の論戦と言うか、言い合いになります。

 

また、予算委員会だから質問しているのは予算委員だと思うと間違いで、差し替えができるのです。予算について審議をしていない有名な議員さん(タレント性が重要です)が質問します。これは、他の委員会でもテレビが入るような場合は同じです。

 

委員会を国民に公開している。テレビやラジオも入れるし、インターネット中継をしている。ということで国民は騙されているような気がします。

公開されていなかった時代の委員会は審議の場だったのですが、公開することでかつての本会議と同じようにパフォーマンスの場になりました。ちなみに、議員にも公開ですから、昨日(証人喚問)なんかは、議員さんが早めに場所取りをして、立ち見も出るような盛況だったそうです。

 

最大の問題は、実質審議の機会が無くなってきているのではないか?ということです。法案は官僚と事前審査をおこなうのですから、政府・与党側は実質審議が少ないほど有利です。今回の森友問題で、政府・与党側と官僚はずいぶん楽をしたと思います。

どこかで、実務が分かる政治家(与野党を問わず)が、きちんと議論をしてくれていればよいのですが?ちょっと心配です。

 

最後に、会社の会議でも、この手は使えます。

興味を惹くような小さいなテーマを議題に紛れ込ませておいて、しっかり議論したような気にさせておいて、本題のほうはスルーで決めさせるようなやり方です。

これをスムーズにできる人が、優秀な事務方と賞賛され、重用されているかも知れません。しかし、あまりこの手法が長く続くと、会社が傾きそうです。御用心・御用心。