環境の価値を現在価値で割り引いてはいけない

今日の1万円は10年後の1万円より価値が高いという意思決定にも注意が必要です。

 

環境問題への対策を、今取るか、取らないままで済ますかという意思決定を求められる場合を考えます。テレビでお馴染みの、T田教授やI田教授の理論は「被害の大きさが不確実な段階で、今費用を掛けなくても、被害が確実になったときに費用を掛ければよいじゃないか」というものです。

 

この理論は、今の1万円は10年後の1万円より価値がある。あるいは、今の1万円は30年後の100万円よりも価値があるという考えに拠っています。

T田教授もI田教授も「そのときに私は生きていないしね」というのが決めゼリフです。つまり、今の1万円は自分が払うのですが、その利益を享受するのは自分ではなく、将来の人じゃないか?(だから、私は負担しない)という考え方です。

 

以前であれば、誰もが、将来の人は自分の子や孫であり、守るべき存在だと実感できました。しかし、結婚や家族の価値観が多様になった現在では、この考えは必ずしもメジャーではありません。足下では、アメリカやヨーロッパをはじめとした先進国でも保護主義が台頭しています。今・この場にいる人が幸せであればそれでよい。より豊かに、より偉大に、なれば幸せだというムードです。

 

しかし、今生きている世界は、あくまでも借り物です。将来の人からお借りして使わしていただいていると自覚しましょう。

今1万円負担することで、将来の1万円を不要とするだけであっても実行するべきです。何故なら、将来の私たちの子孫が1万円の費用を負担できるかどうかはわかりません。世界が常に発展していき、次の世代は今の世代より豊かになっているはずだというのは、今や幻想です。

 

更に言えば、かなりの確率で今1万円を掛けないことで、私たちの子孫が使わざる得なくなるコストは100万円以上になります。

その確率が1%だとして、1%×100万円=1万円を現在価値に割り引いて・・・という考え方は正しいでしょうか?もし、その100万円を負担することができなければ、どうなるでしょうか?「そのときに私は生きていないしね」が正しい態度とは思えません。