『都鄙問答』に経営者倫理を学ぶ

某大手企業の度重なる不手際は、本質的には経営者倫理の問題です。

 

このブログではお馴染みの井原西鶴さんより一世代後に、石田梅岩という方がおられます。

貧しい農家の二男坊だった梅岩は、10歳で今日の呉服屋に丁稚奉公に出てから、働きながら勉強します。後に「石門心学」と呼ばれる町人向けの道徳思想を確立して、この啓蒙につとめました。三百年以上前の、江戸時代の中期の思想ですが、経営者の基本的な倫理として今でも通用します。

 

梅岩の最も有名な著作が「都鄙問答」というものです。鄙(ひな)は、田舎のことです。都と田舎(都会と地方)の問答という表題も現代の課題に通じます。また、江戸時代中期は元禄バブル経済が崩壊して長期不況期に入り、天変地異が続いており、国内人口も減少に転じていました。これも現代に似ています。

「都鄙問答」の言葉をいくつか紹介します。

 

「実の商人は、先も立ち、我も立つことを思うなり」 

近江商人の「三方よし(売り手よし・買い手よし・世間よし)」に通じますが、ビジネスでは相手のことを優先して、その結果として自分も利益を上げることが実質です。

 

「富の主は天下の人々なり」

ビジネスで利益を上げることができるのは、世の中に生きる全ての人の心にかなうように、誠心誠意の商いを心掛けることです。何のために会社を経営してビジネスをおこなうのかと言えば、事業を通じて社会に貢献するためだということです。

 

「商人の道を知らざる者は、貪ることを努めて家を滅ぼす」

ビジネスの道理をわきまえない経営者は、むさぼりによって会社を滅ぼします。倫理的に正しいおこないをすることに注意すれば、目先の欲から離れて会社は反映して、従業員は成長していきます。

 

「正直なくしては、人と並び立て通用なり難し。利を取るは商人の正直なり」

正直でなければビジネスはできないし、利益を上げられるのは正直な商売をしているからです。

 

他にもいろいろありますが、江戸時代の人の方が経済やビジネスについて正しく理解していたように思えるのは、何故なんでしょうか?