将棋の加藤一二三九段の引退、囲碁との違い

加藤一二三(通称:ひふみん)九段は、将棋界最大のアイドル棋士です。

 

昭和29年に当時の史上最年少となる14歳7か月の若さでプロ棋士になりました。現在は77歳を迎えており、将棋界で史上最年長のプロ棋士です。

したがって、当然ながらプロとしての期間が史上最も長い棋士ということになります。数々の栄冠とともに、数々の伝説を持った異色の棋士です。

 

加藤一二三九段の行動でもっとも興味深いのは、「繰り返し」です。

プロの将棋では流行の戦型というのがあって、何局か同じ戦型で戦うことがあります。しかし、相手も対策を取ってきますので、戦型は臨機応変に変えていくのが普通です。

しかし、ひふみんは矢倉なら矢倉、向かい飛車なら向かい飛車と、同じ戦型を一定期間つづけて、その戦型を極めていきます。

 

 

将棋の試合中に食事休憩が入るのですが、そのときもひふみんは「うな重」なら毎日「うな重」、「天ぷら」なら毎日「天ぷら」、のようにメニューが半年から1年間は毎日変わらないのだそうです。食事のメニューを考えるのに頭を使うことはないようです。

 

さて、将棋の場合は大まかに言って65歳定年制です。65歳過ぎてもプロでいるためには、順位戦でランキングに入っていなければなりません。加藤九段は現在順位戦のC2クラスに属していますが、これは最も下位のクラスです。(C2⇒C1⇒B2⇒B1⇒A の6クラス)

 

このC2クラスでは下位20%の成績を3回記録したら降格するというルールです。加藤九段は過去2回、下位20%になったことがありリーチがかかっていました。

初年場の今期ですが、結果としては星が延びずに降格が決定しました。既に65歳を過ぎているので、降格と同時に引退ということになります。(厳密には、継続中の棋戦が全て終わるまでは現役棋士ですが・・)

ちなみに、将棋では65歳定年を全うできる棋士は限られていて、現在は森鶏二九段・桐山清澄九段の二人だけが65歳を過ぎて現役です。

 

さて、囲碁の場合にはこの定年制がありません。何歳になっても自分が引退すると言わなければ現役でプロを続けられます。最高齢の杉内雅男九段は96歳です。

昨年、95歳の杉内九段は15歳の大西竜平初段と対局しました。プロ公式戦で、80歳差の対局は現在までの記録です。ちなみに、勝負は大西初段の勝ち。

 

定年制があるかどうかで、囲碁と将棋のプロの世界には違いがでます。大きな違いは人数で、将棋のプロ(男性だけ)は約160人。囲碁のプロは日本棋院と関西棋院を合わせると460人おります。

囲碁と将棋の市場規模が不詳ですが、仮の同じ大きさと仮定すれば、人数が少ない将棋のほうが一人当たりの身入りが大きくなります。将棋の場合は、最低ランクでもプロであれば生活できる程度には収入があるようです。囲碁の場合は、上位に食い込まないとちょっと苦しいようです。