差別化の罠・・顧客に容易にわかるのか?

中小企業に限りませんが、差別化戦略は最高の戦略だと言われます。しかし・・・

 

特に製造業の場合なのですが、技術や品質でライバルと差別化をすることは容易ではありません。しかし、各社は競って技術の進歩や品質の向上に力を入れます。

そうして、他社よりも優れた製品を作り上げることに成功したとします。確かに、業界№1になったとしても、顧客には№1と2位との間の差がよくわかりません。

№1企業は必死にアピールをします。メーカー側や専門家から観れば1位と2位の間には明らかな差異があるのですが、顧客にはよくわかりません。顧客にわからないということは、要するに差がないのと同じです。

 

話は少し変わるのですが、11月1日に、パナソニックプラズマディスプレイ(PPD社)が大阪地裁に特別清算を申請しました。負債総額は5000億円です。

製造業では過去最大の倒産ですが、債権者がパナソニック1社だけですから、ひっそりとニュースにもなりません。パナソニックは5000億円の大半は処理済みです。

 

2000年代、ディスプレイはブラウン管から薄型ディスプレイに切り替わりました。プラズマディスプレイ(PDP)と液晶ディスプレイ(LCD)は熾烈な競争を繰り広げながら、市場を拡大していきました。PDPのトップランナーだったPPD社は、2009年3月期には年商3140億円を誇っていました。

その後、LCDの大型化、薄型化、省エネ化、画質向上などの技術革新、と大量生産による低価格化に押されてPDPは市場を急速に失います。PPD社は、2014年3月期に年商200億円を計上したのを最後に事業を停止しました。

 

PDPとLCDには、技術的に見ればその品質に明確な差異がありました。PDPは、視野角が広く、 応答速度が速いのでスポーツや映画などで動きがなめらかで画像がクリアなことがマニアには評価されていました。

しかし、一般の顧客にはその差がはっきりとはわからなかったのです。作り手側から観れば差があっても、顧客がわからなければ差別化になりません。技術の進歩が、人間の認知能力を超えてきた現在では、なかなか難しい問題です。