ベンゼンの環境への放出量は年間7676トントン

微量のベンゼンが猛毒のような話が流れていますが、これは誤解です。

 

ベンゼンは合成樹脂など多くの化学物質を製造する際の基礎原料です。また、自動車の燃料になるガソリンにも含有されています。

 

炭素が不完全燃焼すると意図せずに発生するので、火災や火山の噴火などでも発生します。また、以前にこのブログでも書きましたが、たばこの煙にも含まれています。

 

2013年の日本国内での生産量は約469万トンです。また、輸出は12万トンで輸入は77万トンという量です。ざっと、年間に550万トンのベンゼンが流通しています。

主なメーカーは、JX日鉱日石や出光興産などの大手石油化学会社です。

 

こうして流通しているベンゼンの一部は環境中に排出されます。大半(約99%)は、大気中に放出されていますが、僅かには川や海など公共水域にも流入し、ガソリンをこぼしたりすると土壌にもしみ込みます。

2014年の放出量の合計は、7667トンと推計されています。これは、流通量の0.14%に相当します。ベンゼンは揮発しますので、止むを得ない量と思われます。

 

放出量7676トンの内訳は、移動体からの排出量が6062トンで全体の79%を占めます。移動体のうち、4600トンが自動車で、他がバイクや船や飛行機などです。ガソリンなどの燃料にベンゼンが含まれていますので、排気ガスとして放出されます。

 

日本ではガソリンをベンゼン含有量の少ないものに変えてきました。以前はベンゼン5%以下という基準でしたが、今は1%以下になっています。更に、低燃費車の普及で、放出されるベンゼンの量は20年前と比べると一桁下がっています。

 

移動体以外からのベンゼンの排出量は差し引きで1604トンです。

このうち、最も多くのベンゼンが排出されているのは燃料小売業、つまりガソリンスタンドです。およそ240トンくらいになります。

 

ベンゼンは確かに人体に有害です。発がん性があることが知られています。

但し、これらは慢性毒性で、微量のベンゼンに短時間暴露されても影響はありません。長期間ベンゼンにさらされると、発がん性のリスクが出てきます。ガソリンスタンドで給油しても、仮に働いていても、がんになるわけではありません。

 

ベンゼンの環境基準は、「1年平均値が0.003mg/m3 以下であること。」と定められています。「ベンゼン濃度が環境基準の何倍も高い」という話が聞かれますが、大気中の環境基準は”1年平均値”であることにご注意ください。

クルマの通る道路を歩いていればベンゼン濃度はいくらか高いですし、あなたの近くにタバコを吸う人がいたら0.003mg/m3 は超えています。

あまり、心配しないで大丈夫です。

 

但し、豊洲新市場は、このまま開場するのは諦めて、解体して建て替えすることが最善の策です。