見えない・わからない・制御できない

 人は、「見えない」「わからない」「制御できない」ときに、大きな不安をいだきます。

 

 会社でもその他の組織でも、東京都でも国でも、コミュニケーションが大切です。それは、組織に属する人や関係者の不安を取り除くために必要だからです。

 人は「目に見えないもの」「何か実態がわからないもの」「制御できずに暴走しているもの」に対して、不安になり、恐怖を覚えます。

 

 これは、実際のリスクの重要性(ハザードの大きさや頻度)とはあまり関係しません。

 どんな大きなリスクでも、それが目に見えているリスクで、実態が学問的にわかっていて、その制御が可能であれば、人が不安を覚えることはありません。

 

 自動車の運転には、大きなリスクがあります。

 しかし、運転中のリスクは一部を見逃すことがあっても大半は見えています。追突や衝突、人身事故が起こる原因や事故が起こったらどういう被害があるのかも知られています。運転されるクルマは、運転手の支配下にあります。

 このために、人は、普通のクルマの運転で大きなストレスを抱えるまでにはなりません。

 

 そこにあるリスクを目に見えるようにするのが、リスクコミュニケーションです。

 話題になっている、豊洲や東京オリンピックの問題は、リスクが確かにそこにあることはわかっているのに、実態がよく見えないから起こります。

 

 コミュニケーションとは、「社会生活を営む人間が互いに意思や感情、思考を伝達し合うこと。」と国語辞典にあります。

 ”人間が互いに”、”意思・感情・思考を”、”伝達し合う”のですから、誠心誠意で説明をして、相手の意見を真摯に聞いて、双方向に正直で質の高い対話をすることがコミュニケーションです。リスクコミュニケーションでは、その対話の対象がリスクというわけです。

 

 豊洲市場問題では、何の対話もされず、そもそも誰と対話していいのかさえ、「見えない」「わからない」「制御できない」状況です。不安を払しょくできるわけがありませんね。

 同列にしては、失礼かも知れませんが、北朝鮮の核ミサイルを発射するリスクが「見えない」「わからない」「制御できない」ので、国民が不安に思っているのと同じです。

 

 ただ日本人は、とかく不安を無かったものにしようとするところがあります。「そんなの起こりっこないよ」、「取り越し苦労さ」、「杞憂というものだ」、というのが口癖の人も多いです。

 しかし、「失敗する余地があるなら、失敗する。」という、マーフィーの第一法則は、たいていの場合に成立します。リスクコミュニケーションを大切にしましょう。