猛毒のシアンが検出されましたが、なにか?

 豊洲の地下空間の水から猛毒のシアンが検出されたと騒ぎになっていますが・・・

 

 騒ぎ方が煽動的過ぎるので、心配しています。

 シアンは「検出されないこと」が環境基準だが、都議会公明党の調査で0.1㎎/ℓのシアンが検出された。東京都の調査では検出されていないので、再調査を依頼するという内容です。

 

 まず、誤解を与えているのが「検出されないこと」という表現です。「検出されないこと」とは「存在しないこと」ではありません。ある決められた方法で定量できる限界以下であれば「検出されなかったこと」になります。

 

 シアンの場合は、環境基準は吸光光度法で定量して「検出されないこと」が基準になっていて、その定量限界は0.1㎎/ℓです。シアンが0.1㎎/ℓ検出されたということと、「不検出」の間にはあまり差がありません。

 日本の水道水の基準は、0.01㎎/ℓ以下と世界一厳しいのですが、これはイオンクラマトグラフという別の方法で定量します。分析の方法には、いろいろなものがあって、精度が異なります。当然ですが、精度の高い分析法で検出されないものは殆どありません。

 要するに、現時点では騒ぎ立てるほどのことはないということです。

 

 次に、「シアンが猛毒」ということですが、シアンに急性毒性があるのは知られたことです。推理小説の殺人事件では、シアン(青酸)化合物は、最もポピュラーな毒物の一つです。

 どのくらい猛毒かというと、半数致死量(LD50)で5㎎/㎏くらいです。人の体重が60kgとすると、300㎎(0.3g)くらいで半分の人が死にます。~毒物への耐性は個体差がありますので誤解しないでください。実際の人でテストした結果でもありません。~

 また、シアンの無毒性量は4.5μg/㎏・日ですから、体重60㎏とすれば1日に0.3㎎くらいまでのシアン摂取では影響は出ません。 

 

 ついでですが、シアンを使った殺人事件で探偵が「アーモンド臭がするから、毒物は青酸化合物だ」と言う場面がありますが、アーモンドにはシアンが含まれています。

 食品としての規制基準は10㎎/㎏なので、アーモンドを30㎏食べると半分の人が死にそうですが、これも無理というか、シアン以外の理由で命が危ないですね。

 シアンはアーモンド以外にもアンズや梅、リンゴの種などの種子類、モモなどの果実類、キャッサバなどのデンプン類などに僅かずつ含まれています。

 

 シアンより毒性が強いもので有名なのは、アコニチン(トリカブトの毒)でLD50が0.1㎎/㎏くらい、オウム真理教が使用したサリンが0.3㎎/㎏くらいです。

 

 そして、シアンよりちょっと毒性が弱いのがヒ素で、ちょっと強いのが、ニコチンです。

ニコチンのLD50は、およそ3㎎/㎏です。

 タバコ1本当り、ピース2.3㎎・セブンスターで1.2㎎・マイルドセブンで0.8㎎のニコチンが入っています。赤ちゃんの誤飲事故の原因で最も多いのがテッシュペーパーで、次がタバコだそうです。確かに、タバコはマイルドにはなってきていますが「毒物の缶詰」です。

 

 ここで、トドメですが、シアンはC(炭素)とN(窒素)の化合物です。

 もちろん、タバコの煙にも含まれます。最大値では、主流煙(肺に入るほう)で1本当り0.25㎎、副流煙で0.15㎎のシアン化水素(青酸ガス)が含まれているそうです。

 これでも、まだ吸いますか?