環境基準は「終局的な目標値」です

 豊洲新市場の問題では、技術者ならぬ偽術者と、ちょっと呆けた芸能人・コメンテータが、ワイドショーで掛け合いを披露して、人々を不安にさせたり、混乱をさせています。

 

 今回の件では、東京都が盛り土を勝手にしていなかったという、驚天動地の無茶苦茶な行為が全ての原因です。さすがに、これは酷いですし、あり得ないことです。

 これだけあからさまに実行していたのに、誰も指摘しなかったというのも信じられません。

 最初は無知から始まったことかも知れませんが、何も言われないからまぁいいのかな?ということで進んでいったのでしょうか?理解できません。

 

 さて、話題になっている「環境基準」です。この定義を知ってください。

「人の健康の保護及び生活環境の保全のうえで維持されることが望ましい基準として、終局的に、大気、水、土壌、騒音をどの程度に保つことを目標に施策を実施していくのかという目標を定めたものが環境基準である。」

 

 先ず、環境基準とは国が定める望ましい基準であり「終局的な目標」であることを理解ください。「環境基準の4割のヒ素が検出された」のは、問題でも何でもなく、「終局的な目標を更に下回る微量なヒ素が検出された」ということです。

 但し、環境基準は制定された時点では確かに「終局的な目標」なのですが、日本人は目標をつきつけるとやり切る人たちなので、どんどんクリアしていきます。

 

 例えば、大気中のベンゼンの環境基準は年平均で3㎍/㎥です。これは、平成9年に決定された基準であり、「目標値」です。

 環境省のHPからベンゼン濃度の推移を観てみましょう。

 平成9年 測定地点  31カ所  最大11㎍/㎥・最小0.77㎍/㎥・平均3.4㎍/㎥

 平成10年 測定地点 292カ所 最大11㎍/㎥・最小0.20㎍/㎥・平均3.3㎍/㎥

 つまり、環境基準が設定された頃は、平均値でさえも環境基準を超えていました。

 

 さて、最新の平成26年のベンゼン濃度のデータです。

 平成26年 測定地点 404カ所 最大2.5㎍/㎥・最小0.41㎍/㎥・平均1.0㎍/㎥

 何と言うことでしょう?日本には環境基準を超えた地点は一つもありません。

 これは、これで凄いことです。

 

 但し、ちょっと注意が必要です。ベンゼンの環境基準は年平均値です。短い時間で測定される濃度ではありません。健康被害は、有害物質への曝露量で決まるのです。

 現在のガソリンにもベンゼンは1%くらい含まれています。(ベンゼンの発がん性が判ったので、1%以下に規制が強化された結果です。それ以前は5%が基準でした。)

 自動車が走れば(排気ガスを出せば)ベンゼン濃度は上がります。豊洲より築地のほうが、大気中ベンゼン濃度が高かったという記事がありましたが、当然ですね。

 豊洲はまだ開場していないので、自動車があまり走っていないのです。

 

 タバコを吸わない人・家族がタバコを吸わない人の場合、ベンゼンへの曝露の50~85%は自動車排ガス由来です。

 タバコを吸う人が身近にいれば、タバコがベンゼンの元になります。

 1本のタバコの副流煙では200~300μgのベンゼンが放出されます。もし、6畳間が20㎥の空間とすれば、濃度は10~15㎍/㎥です。たいていのオフィスの喫煙室は、もっと狭くて多くの人がタバコを吸っていますから、ベンゼン濃度は100㎍/㎥以上かも知れません。

 環境基準の何十倍にもなります。・・こう聞くと、すぐ死んじゃいそうですね?

 もちろん、ずっと喫煙室でサボっているのでなければ、あまり心配ありません。

 

 どうも、いつも最後はタバコ批判になるので、申し訳ないのですが・・

 タバコは「毒の缶詰」であり、火災や事故のモトです。今や、喫煙者は絶滅危惧種ですから、そろそろ諦めて、禁煙にチャレンジしましょう。