要注意!事実で嘘をつく方法

 昨日の続きですが、技術者のなかには欺術者も結構います。要注意です。

 

 有名な事実で嘘をつく方法を2つ紹介します。

 

 『A大学が入試で女性差別!!』

 「A大学では、受験生の平均偏差値は男性が55、女性が56だった。ところが、合格者は男性が60%以上を占めていた。これは、入試に恣意的なバイアスがあるからだ・・。」

 この報道だけを聞けば、ちょっとその通りだと思いますよね?

 

 A大学には三つの学部がありました。

 学部  男性(合格者/受験者 = 合格率)  女性(合格者/受験者 = 合格率)
 B学部  250人/ 500人 = 50%  300人/ 500人 = 60% 
 C学部  800人/1000人 = 80%   90人/ 100人 = 90%
 D学部   20人/ 100人 = 20%  250人/1000人 = 25%
 合計  1070人/1600人 = 67%  640人/1600人 = 40%

 上の表の結果では、どの学部でも男性より女性の合格率が高くなっています。しかし、合計すると、男性の合格率の方が女性の合格率を大きく上回りました。

 これは、男性は、入学定員の割に人気が低くて合格率の高いC学部を多く受験して、女性は人気が高くて難しいD学部を多く受験していたことが原因です。

 A大学は入試差別をしていたわけではありません。濡れ衣を着せられたわけですが、この種の差別だ!報道は結構ありますので、注意が必要です。

 

 『E病院は患者を実験台にしている!!』

 「E病院は治癒率が75%のG療法を採用しないで、治癒率が71%と劣るF療法だけをおこなうという方針を決定した。明らかに患者を実験台にする行為だ!!」

 これも、なるほどと思います。

 

 E病院ではこれまでの治療のデータを分析していました。

 治療法

男性

(治癒/患者=治癒率)

女性

(治癒/患者=治癒率)

合計

(治癒/患者=治癒率)

 F療法  80人/100人=80%    20人/40人=50% 100人/140人=71%
 G療法  78人/100人=78%   4人/10人=40%  82人/110人=75%
 合計 158人/200人=79%  24人/50人=48% 182人/250人=73%

 上の表でわかるように、男性でも女性でもF療法のほうが治癒率が高いという結果になりました。しかし、男女を合わせると、報道の通りでF療法の治癒率はG療法より劣ります。

 これは、男女で治癒率に差がある(男性が治癒しやすい病気)ことが原因です。

 E病院は、決して患者を実験台にしているわけではなくて、F療法に専念することで、経験を積んで技術を磨き、治療効果を高めることを方針に決めたということです。

 合理的な判断です。