電力ビジネスでは日本は海外と全く異なる

将来の電力需要予測は、政策のバイアスを外すと減少する可能性が高い。(昨日のブログ)

 

電力ビジネスにおいては、日本に海外の状況はそのままあてはまりません。事情が全く異なるということを理解して進めます。

電力は国の基本インフラであり、国民の生命や財産に重大な影響を与えます。その国の電力市場には、歴史的な背景があり、国民の性格や考え方を反映するうえに、その時の政権の政策によって影響されます。

 

これまでも何度か書いていますが、日本の電力網は非常に特殊です。日本は島国であって、他の国との連系が全くありません。実は、国を超えた電力網を全く持たない国は、珍しいのです。ヨーロッパのようにほぼ完全な連系がとれている国もあります。アジアの国々でも国境を超えた電力の融通をしています。

 

さらに、日本は歴史的ないきさつから、東西で周波数が異なっています。日本では、この東西の連系・本州と北海道・本州と四国・本州と九州の主に4つの連系が必要です。

現在の東西の周波数変換連系の運用容量はわずかに120万kwしかありません。本州と北海道は60万kw・本州と四国は260万kw・本州と九州は下り50万kw/上り250万kwです。

 

連系線の容量が小さいことが、日本の電力網の大きな課題です。連系線の容量を大きくするには多額なコストがかかります。もし、今後も電力需要が増えていくならば、その投資は回収できますが、現実的に需要が減っているなかでの投資は国民に負担を強いることになります。

また、海を渡る連系線は安全保障上の課題が避けられません。津軽海峡や関門海峡は国際航路ですから、連系線が攻撃されるリスクは予期されます。

 

よくドイツが再生可能エネルギーの先進国としてよく紹介されます。原子力発電を2022年に全廃する計画をつくったことが印象的です。

そのドイツでも、太陽光から水力までの再生エネルギーが電力に占める割合は、まだ約25%です。これも原子力発電の割合が75%を超える隣国フランスとの連系があってのことです。

 

現在の再生エネルギーによる発電比率の世界平均は約22%です。日本は約15%ですから、確かに世界でも下位に位置します。

大国では、アメリカが14%・中国が21%・ロシアが18%くらいです。

 

再生エネルギー比率が高いのは、アイスランドやノルウェーがほぼ100%で、50%を超える主要国はブラジル・カナダ・スイス・スウェーデンといった、電力需要の大半を水力発電でまかなえる国だけです。そして、これらの国は電力多消費文化の国でもあります。

 

さて、日本の国土利用を考えると、水力発電の開発(ダム建設)は厳しいものがあります。要するに、日本ではネガワット(省電力)が最も効果的な施策です。

一人当たり電力消費量が下がっていくことに対応していけることが、電力ビジネスの成功のカギになりそうです。

 

※一人当たり電力消費量(上に出てきた国・千kwh)

アイスランド   53.2

ノルウェー     23.7

カナダ      15.6

スウェーデン   14.3

アメリカ     13.0

スイス      8.0

日本       7.8

ドイツ       7.1

ロシア       6.6

中国        3.5

ブラジル      2.5