普遍性を求めて新SIへの移行が進められています

基本の計量単位は7つ(長さ・質量・時間・温度・電流・光度・物質量)です。

 

以前、質量の定義が変わろうとしていると、このブログで書きました。

質量は、今でも「キログラム原器」という基準によって定義されています。現在、質量をブランク乗数に基づく定義に変更しようとしています。

長さも以前は「メートル原器」で定義されていましたが、今は光速という物理乗数で定義されています。計量単位は、全て科学の基準になりますから、より普遍的な物理乗数で定義しなおそうという動きです。

 

現在、基本7単位で物理乗数で定義されているのは、長さ(c:光速)・電流(μ:真空の透磁率)・光度(k:視感効率)の3つです。この3つは、比較的普遍性が高いのです。

但し、電流(アンペア)は透磁率が質量で定義されるという課題があり、質量の定義が変わることで同じ物理定数の電気素量への再定義がされようとしています。

これより普遍性で劣るのが、物質乗数で定義されている、時間(セシウム)・温度(水)・物質量(炭素)の3つです。そして、最も普遍性がないのが原器で定義される質量です。

 

今後数年以内に、質量は物理乗数で定義され直して普遍性を持ちます。アボガドロ定数とプランク定数の正確な値が測定されるようになったからです。

これで残るは、物質定数で定義される3つの単位です。

時間は、セシウム133の放射周期の91億9263万1770倍を1秒と定義されているのですが、これを物理乗数で定義しなおすのはやっかいです。

 

温度の単位はケルビンで、水の三重点の熱力学温度の1/273.16と定義されています。

水の三重点温度の正確な測定には一定の誤差がでます。水は水素と酸素でできているのですが、それぞれ同位体が存在するので同一の同位体組成の水で測定しなければなりません。標準水の同位体組成は定義されていますが、安定性が確実ではなく、僅かな誤差の原因になります。また、水の三重点近傍の温度は正確でも、そこから離れるにしたがって精度が低下する問題もあります。

 

そこで、現在は温度をポルツマン定数による定義に変更する作業が進められています。

もともと、ケルビンと熱力学温度で定義されているポルツマン定数でケルビンを定義しなおすという、ちょっと考えると、わけのわからないことになっています。要するに、正確な熱力学温度があればポルツマン定数を定義することで、ケルビンが定義できるというわけです。

 

以上、まとめると次のようになります。

長さ :メートル   光速

質量 :キログラム  プランク定数   ⇐ 原器

電流 :アンペア   電気素量     ⇐ 真空の透磁率

物質量:モル     アボガドロ数   ⇐ 炭素12

温度 :ケルビン   ポルツマン定数  ⇐ 水の三重点

光度 :カンデラ   視感効率

------------------------------------------------

時間 :秒      セシウム133