舛添都知事の戦略的意思決定を考えてみました。
できるだけ単純化して考えます。
プレイヤー:舛添都知事と都議会(都議会には現在123人の議員います)の2組。
前提条件:都議会のほぼ全構成員(少なくとも7会派119人)が舛添都知事の不信任案に賛成(消極的な賛成を含めて)している。
ルール:不信任案の可決の条件は、定数の2/3以上の出席で、出席者の3/4以上の賛成。
議会解散があった場合は、新しい議員が最初の議会で、定数の2/3以上の出席して、出席者の1/2以上の賛成で不信任が成立。
※ 地方自治体の首長には議会の自由解散権はなく、不信任が可決されたときだけ解散が選択できる。(つまり不信任案の可決は、解散権を与えることになる。)首長は、総理大臣と違って議員が選ぶのではなく、有権者が直接選んでいるからです。
不信任案が可決されると、戦略的意思決定は舛添都知事だけに選択権があります。
選択肢は、都議会の「解散」あるいは自らの「辞職」です。
素直に考えれば「解散」を選択するのが合理的です。(「辞職」して仮に再選挙で都知事に当選しても、都議会の構成が変わらなければ、また不信任の議決をされるのですから。)
しかし、選挙で勝った(=有権者に信任された)都知事に、議会が再度の不信任を出すわけにはいきません。従って、選挙に勝てる見込みがあれば「辞職」が合理的になります。
したがって、都知事選挙で勝てる見込みが薄い(あるいは確信がない)ならば、「解散」です。改めて都議会議員選挙をおこなって、不信任に賛成しない議員が1/3以上になれば、都知事は続けられます。
ここでは「賛成しない」は、「反対する」ではなくて「どちらでもない=欠席」のことです。議員選挙で、積極的に賛成しない議員を1/3以上確保できると考えれば「解散」は合理的です。
ところが、現時点では、舛添都知事が再選挙で勝てる見込みも薄くて、議会選挙で新たに選出された議員でも親舛添派議員を1/3以上も確保するのは難しそうです。
なにしろ全会派が不信任に賛成なのですから、どの政党が勢力を伸ばしても同じことです。
(ちなみに、現在の構成:自民56・公明23・民進系18・共産17・他9・欠4=定数127)
そこで、ウルトラCがあります。議会を「解散」したうえで、知事も「辞職」する。つまり、都知事選と都議会戦のダブル選挙に打って出るというのが考えられます。
「辞職」だけでしたら、対立候補が”反舛添”を競い合うという選挙になりますから、舛添知事が勝つのは容易ではありません。複数の対立候補が出るでしょうが、戦える人は1~2名でしょう。しかし、知事選挙と議会選挙を同時におこなえば”反舛添”だけでは戦えません。
誰が都知事になるにしても、自らを信任する議会構成を同時に求めることになります。
さっきと同じ理屈で、最低でも親知事派の議員を1/3確保しなければ、いつ不信任案が出されるか不安です。都政運営のためのに、議会与党の存在は不可欠です。
つまり、同日選になれば、知事候補者は議会を構成する政党と協力しながら、有権者に政策を問うという選挙になります。これなら、もしかすると奇跡が起こるかも知れません。
また都議会の審議の場での、”やじ”やわざとらしい失笑が、議員さんの質にも問題がありそうだと有権者に気づかせたと思います。都民としても、任期が残り1年ほどしかない議会選挙の前倒しは受け入れやすいでしょう。
都知事がこの選択をするような気がします。いかがでしょうか?
(6月16日朝:追記)
結果は、不信任案が提出される前の自発的な辞職となりました。
地方自治は、国政(議院内閣制)と異なり、首長が有権者から直接選挙で選ばれます。首長は大統領と言われる所以です。首長と議会の関係は基本的には独立しています。(と言うか、三権分立の観点からは、独立していることが求められるはず?)
余談ですが、例えばオバマ大統領や朴槿恵大統領が議会から不信任案を出されることはありません。そもそも、そういう制度は無くて、重大な犯罪を犯さない限り任期は全うされます。
ここまで書いて、次の都知事は?ですが、次のアメリカ大統領のことも大いに気にかかりますね。