日本永代蔵(中編:11~20)まとめ

井原西鶴・日本永代蔵の連載も、三分の二が終わりましたので、おさらいします。

 

日本永代蔵は、今で言えば「経済短編小説集」です。全部で30の物語が描かれていますので、先週まででちょうど三分の2になりました。中盤の11~20編の解説をします。

 

日本永代蔵が刊行されたのは 貞享5年(1688年)1月のことです。この年の9月に元号は元禄に替わります。今から330年ほど昔のことになります。

 

この年に起こった世界史上の大事件は、大同盟戦争(ファルツ戦争・九年戦争)の勃発です。 

太陽王と呼ばれたフランスのルイ14世は当時欧州最強と言われた軍事力を背景にして、スペインやオランダへの侵略戦争をおこない領土拡張を目指しました。現在のルクセンブルグにあった神聖ローマ帝国(オーストリア)の公領ファルツを巡る紛争が、フランス対同盟国(オランダ・スペイン・オーストリア・スウェーデン・イギリス)との9年間に渡る国際戦争の発端になりました。フランスと同盟国側(イギリス)は、欧州大陸だけなく、新大陸アメリカでも戦います。

 

日本永代蔵は、このように世界が侵略戦争に明け暮れている時代に書かれた物語です。

当時の日本は、徳川幕府の安定した政権運営の下で、自由闊達な経済活動が行われていました。日本永代蔵は、驚くほどに現在のビジネスにピッタリと合った教訓を与えてくれます。

 

それでは、11編~20編までの10編の主題をおさらいしておきます。

【 】の教訓は、今でも同じように通用します。

 

11.煎じやう常とは変る問薬(とひぐすり)

元手を掛けずに金儲けをするには、若いうちに、早寝早起きして家業に励み、無駄な出費を抑えて健康に留意すること。年を取ったら、生活をしっかり楽しむのことが大事だ。

【若いときに働いて金を貯め、老後は楽しみのために金を使う!!】

 

12.国に移して風呂釜(ふろがま)の大臣

先代から承継した事業を何倍にも大きくしたとしても、それは現経営者の力量だけはありません。自分一人で作った資産だとうぬぼれると、あっという間に失ってしまいます。

【謙虚に守り抜かなければ、栄華は永くは続かないと心得る!!】

 

13.世は抜き取りの観音の眼(まなこ)

よほど心の強くて、先見性のある人しか、一攫千金のビジネスは成功しません。しかし、裏返せばずる賢いだけで成功したように見えただけですから、成金は最後には落ちぶれていきます。

【親や信頼できる先輩の意見を聞いて、正直なビジネスをする!!】

 

14.高野山借銭塚の施主

ビジネスには運不運があって、景気や事業環境によっては失敗することもあります。仮に失敗をしても、信用第一に正直な仕事をすれば、最後には成功します。

【ビジネスは失敗することもあるが、誠実な処理をすればきっと取り戻せる!!】

 

15.紙子身代の破れ時

どんなに時流に乗ったビジネスで成功しているように見えても、簿記記帳に抜けがあり、どんぶり勘定でやっていると会社は破たんしてしまう。

【ビジネスに、正確な記帳は欠かすことはできない!!】

 

16.折る印(しるし)の神の折敷(をしき)

ビジネスで成功した人は、利益だけを考えるのではなく、新しい商品やサービスを提案して社会の人々に役に立つことを目指します。成功したら、後進に会社を譲って、永く続けてもらうのです。

【本業で社会的貢献をしている会社だけが、永続きする!!】

 

17.心を畳み込む古筆屏風(こひつびょうぶ)

ビジネスでは仮に不運から失敗をしても、再起する努力を続けていくことです。努力を続けていれば、幸運に恵まれることもあります。

【自棄にならずに、冷静に懸命な努力を続ける!!】

 

18.仕合せ(しあわせ)の種を蒔銭(まきせん)

ビジネススキルは簡単には身に着きません。習得できたスキルこそが、天職と言えます。人生を成功する人は、生涯を天職から離れないでいるものです。

【今やっている仕事を天職として精進する!!】

   

19.茶の十徳も一度に皆

商品の産地や性能を偽造や偽装する不祥事は跡を絶ちません。ビジネスにおいて、利益への妄執は、顧客・従業員など全ての関係者を不幸にして、会社を潰すことになります。

【悪質の利得行為には、絶対に手を染めない!!】

 

20.伊勢海老の高買ひ

ビジネスはそのときの利益ではなくて、永く続けることが大切です。少ない利益であっても顧客を大切に守ります。難しい注文にも利益を横に置いてチャレンジすることです。

【顧客第一で精進すれば、会社は永続きする!!】

 

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 2016年3月20日 「日本永代蔵(前編:1~10)まとめ」