転落災害を防ぐ。安全帯を正しく使おう。

 労働災害で最も多いのは「墜落・転落」で全体の17%を占めます。

 

 業種別でみると、製造業では「はさまれ・巻き込まれ」が27%で最も多くて、「墜落・転落」は11%です。但し、死亡事故に限ると「墜落・転落」の割合は16%に上がります。

 建設業では「墜落・転落」が圧倒的に多くて死傷者の35%(死亡の39%)を占めます。

 

 「墜落・転落」事故で、最後に生命を守る保護具は「安全帯」です。

 ところが、「安全帯」を全く装着していない、装着していても正しく使用していないという例がかなりあります。保護具のなかで、最も正しく使用できないものが「安全帯」です。

 

 昨年7月に、マンションの解体工事での転落死亡事故がありました。

 入社したばかりの19歳の新人作業員でした。安全帯は装着していましたが、親綱に接続していませんでした。廻りには上司に当たる人を含めて、ベテランの作業員がいたのに指摘をしていませんでした。新人にとって、安全帯をきちんと使うことまで神経を廻し切れないものです。

 

 鉄骨建方作業をおこなっている際に一本吊りの安全帯でU字吊りをして、カラビナが破損して落下した死亡事故があったのは、このマンションの近くです。

 安全帯のカラビナは11.5kNの荷重に耐えると法令で定められています。重力加速度を10m /s2で近似すると、1,150kgの重さに耐えるということです。しかし、一本吊りの安全帯には本来のカラビナは1つですから、作業者が自分でつけたU字吊りに使ったカラビナは規格外のものでした。

 

 さて、正規の安全帯は一定の余裕をみてつくられています。わかりやすく重さで表記すれば、ベルトは1,500kg・バックルは800kg・その他のロープやカラビナは1,150kgの重さに耐えます。

 ここで、少し注意したいのは「墜落・転落」したときにどれだけの荷重がかかるのかです。

 

 安全帯のロープやテープの長さは、最大で2.5mと決まっています。接続は安全帯より高いところにすることがルールですから、「墜落・転落」の最大長さは2.5mです。

 最大の2.5mを落下したときの速度は、v=√2×10×2.5=7m/S です。

 ロープやテープの伸張度が規格の下限と仮定すると、2.5mの落下の場合には体重の10倍の荷重が安全帯にかかります。仮に体重100kgの人の場合では、かかる荷重は1,000kgになります。つまり、規格ギリギリで安全帯が支えることができます。

 

 これはやってはいけないのですが、フックの取り付け位置を腰より低いところ、極端な場合は足場に掛ける場合があります。親綱の展張をしなかった場合などです。

 そうして、「墜落・転落」距離が、3.5mになれば、同じ計算で係る荷重は体重の12倍。体重が100kgに人なら、荷重は1,200kgになります。

 こうなれば、カラビナやフックが破損する可能性がでてきます。

 

 「安全帯」は「保護帽」や「手袋」と並んで、重要な保護具です。

 製造業の工場建設現場でも、「立ち入りには安全帯を装着すること!」と規定することはよくあります。視察に来た本社の偉い人に、かたちだけ「安全帯」をつけてもらって・・なんてこともありますが、あまり意味がないですね。

 事前によく学ぶことと、現場で声を掛け合うことで、正しく使って事故防止を心掛けましょう。

 

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