地震の影響~建物実験のハテナ?

テレビで、地震の際に新耐震基準への適合有無での建物のダメージがどう違うか、実験していました。

 

1辺が20mくらいもある巨大なステージに、ほぼ実物大の建物を二棟建てます。

ステージは振動台になっていて、地震の震度に応じて揺れるようになっています。実際に揺れ始めると、耐震性能の低い建物はすぐに柱が折れて斜めにバッタンと倒れてしまいます。比較されている現在の新耐震基準に沿って建築された建物のほうが、大きく曲がりはしますが倒壊は免れます。

 

皆さんもテレビで見ていると思うのですが、確かに印象に残る映像です。

但し、第一印象としては「何だかもったいない」です。僅か数十秒で倒壊する建物を建てて倒壊させる実験ですから、多額の費用がかかってしまいます。また、同じような実験としては、津波の影響を調べる水理実験や、自動車などの性能を調べる風洞実験などがあります。

 

これだけコンピューターが発達しています。日本には1秒間に1京回の計算をすることから「京」と名付けられたスーパーコンピューターもあります。実際に実物大モデルをつくって実験するのではなく、シミュレーション計算でも同じ結果は導かれるのではないのかな?と思います。

例えば、建物の床面を揺らしたときに、柱や壁にどれだけの力がどの方向にかかるのかをコンピューターが計算するのは、それほど難しくないように思います。CGなら、何度でも再現事件が可能じゃないか?ということです。

 

それでも多額の費用を使って実験するのは、テレビで映す見映えのためではなく、やはりコンピューターでは計算がうまくいかないのでしょう。

一つは、やはり実際の振動の影響というのは複雑なので、計算そのものが膨大なものになって、仮にスーパーコンピューターを使っても計算時間が長くなりすぎるのかも知れません。

二つは、実験用建物そのものの構造が一定に保てないということかも知れません。耐震設計通りに施工するとしても、現実に設計通りの施工ができない場合もあるのでしょう。

ざっくり言えば、科学技術は、まだまだ純粋科学では測り知れない部分が残っているということですね。

 

そうは言っても、日本の建築や土木工学の水準は世界に誇れるものです。そこで、情報工学との連携を進めていって、実際の実験をしないでもシミュレーション計算で正確な評価ができるようになるといいなと思います。

 

いわゆる計算力学(計算科学)が発展していくことが望まれるのですが、近年の日本では数値解析そのものの研究は、人気があまり高くないような気がします。

住宅くらいなら実験も可能ですが、高層建築や複雑な意匠の建造物ではそうもいきません。地震の影響に限りませんが、自然の脅威を克服するためには、数学を自由に扱えるスキルはますます重要です。