天の神から冥府の王

 ワシントンで核セキュリティ・サミットが開催。安倍首相はじめ世界の首脳が集まりました。

 

 日本にとって隣国でもある北朝鮮が原子爆弾・水素爆弾と核兵器の開発に成功して、それを撃ち込むためのミサイルも射程の長い大陸間弾道弾まで保有している。しかも、若い指導者が何かと挑発的な態度をとっています。日本にとっても緊迫した状況でのサミットです。

 

 また、小規模な核兵器は身近な技術でつくることが可能です。ISをはじめとする過激派の武器にもなり得ます。ベルギーでは原子力発電所に侵入しようとしたという報道もありました。

 国際的な会議で何がどう決まるのか(決まらないのか)はわかりませんが、心配なことです。

 

 さて核兵器のうち、原子爆弾はウランやプルトニウムなどの原子核が分裂するときのエネルギーを利用したものです。一方で、水素爆弾は重水素や三重水素の核融合エネルギーを利用したもので、起爆装置には原子爆弾を使用します。

 

 ここで出てくるウラン(U)というのは、原子番号92の重い元素ですが、地球上にはとても大量に存在します。ほとんどの岩石中に存在していて、合計すると数百兆㌧くらいです。海水中にも低濃度ながら存在していて、全部集めると数十億㌧になります。

 ウランは毎年数万トンが採掘されていて、主な産出国はカナダ・カザフスタン・オーストラリアの3か国です。日本でも以前は岡山県の人形峠などで採掘されていました。

 

 ウランは18世紀末には既に発見されていました。ウランは最初に発見された放射性元素で、発見したのはフランスのベクレルです。(2年後に、キュリー夫妻がラジウムが放射性元素であることを発見します。)

 ウランは、人類にとって意外に身近で馴染みのある元素です。

 

 さて、ウランは普通に存在している最も重い元素でもあります。ウランより重い元素、原子番号93以降を超ウラン元素と言って、天然ではほとんど存在しません。

 プルトニウムは原子番号94です。1940年に、アメリカ・カリフォルニア大学のグループがウランに重陽子や中性子を照射した人工的な生成物として発見しました。

 

 プルトニウムの強力なエネルギーは、心臓ペースメーカー用の超小型原子力電池や宇宙を廻る人工衛星などにも使われるのですが、一旦制御を誤ると大きな障害にもなります。

 

 ウランの名前は天の神(ウラーノス)が由来です。プルトニウムは冥府の王(プルート)が由来です。直接的な由来は天王星と冥王星ですが、天界の神から黄泉の国の支配者が産まれるのは、ちょっと暗示的です。科学の進歩には限りはありません。それを使う人の心こそが大切です。