日本永代蔵より(5) ・・・ 世は欲の入れ札に仕合せ

日曜連載は、井原西鶴の「日本永代蔵:現代版アレンジ」です。第五回。

 

”南都に隠れなき松屋が跡式  後家は女の鏡となる者”

(奈良で知らない者がいない松屋の借金。残された奥さんは女の鏡のような人。) 


近頃は結婚紹介ビジネスが大流行りです。親切でやっているわけではなく、結婚の格式に応じたマージンを取っています。結納が500万円の結婚なら、マージンはその十分の一で50万円とかです。

お金持ちとお金持ちの結婚だとマージンが多くなるので、一生懸命に探して紹介します。

 

結婚する男性側の両親も、よい花嫁に来てもらおうと、住まいを新改築したり部屋の増築などをして飾り立てます。新車を買ったり、ブランド物で飾ったりして身の程知らずの散財をします。

嫁に出す側の両親も、自分の家より格式の高い相手を選り好みして、見た目のよい花婿を探します。格好のよい男は、だいたい浪費家やギャンブル狂いで、最後は身を持ち崩すのですが・・。

 

結婚というのは、相手の欠点が十あれば、そのうち五つを我慢してこそ、うまくいきます。どんなに美しい相手でも、どんなに高貴な相手でも、心根が悪い相手との結婚はやめることです。それとは逆に、どんなに見てくれが悪い相手でも、商売上手で始末をするのなら結婚したほうがよいです。

 

さて、奈良の街に布地を商う「松屋」という店がありました。主人は一生懸命に働いて、店は大繁盛して、豪勢な家屋敷も造りました。儲かると浮かれるのは世の常で、美食と酒に溺れてしまい、結局は大きな借金を作ります。そのうえで、不養生がたたって主人は50歳に若さで急死しました。

 

残された奥さんは38歳ですが、小柄で可愛らしい人で27・8歳にしか見えません。幼い子どもはいますが、現代的な美人で、すぐにでも再婚するかと見えました。

 

ところが、この奥さんは今まで着ていたドレスを作業服に替え、化粧もしないで店の仕事に取り組みます。商売の才覚も亡夫以上だったのですが、女性ゆえにできないこともあります。いろいろと方針を変えて経営したものの、なかなか思うようにはゆきません。どうしても5000万円ほどの借金が残りました。

 

そこで「天狗頼母子(現在は違法ですが、江戸時代にあった民間くじ)」に登録して、豪華な家屋敷を「運試し4万円」で売り出しました。3000人から応募があって、総額1億2000万円を受け取り、5000万円を完済して7000万円が残りました。

 

くじを当てたのは、家政婦をしている女性です。4万円で家屋敷持ちになりました。