西鶴の時代のCSR

江戸時代のCSR(企業の社会的責任)のほうが、現在よりも厳格だったかも知れません。

 

江戸時代(徳川幕府)は265年間の長きに渡りました。

世界中・古今東西の歴史上、このような長い期間、内戦も含めて一度の戦乱もなく、一つの政権が安定して統治していたという時代はありません。

 

そのようななかでは、企業はサステナビリティ(持続可能性)を高めることが最も重要です。このためには、企業はCSR(企業の社会的責任)を果たす努力を怠りませんでした。

 

大企業(大店)が定めていたルール(掟書)の多くが今に残っています。

その内容は、法律(御法度)や規則(御触れ)を遵守すること。家業に精励し、本業以外に手を出さないこと。早期の債権回収や経費の削減、正確な経理や会計監査の方法などが決まっています。

従業員の就業規則・給与規定・服装や身だしなみなども、現在の企業並みかそれ以上のルールが明確に定められています。

 

また、東京(江戸)の大店の特徴は、火災に対する備えについて細かく決めていることです。火災の備えとして、近隣に住む長屋の職人などに、常日頃から金品を援助するなどして非常時に協力してもらえるようにすることなども書かれています。

 

企業が集まった業界では「仲間定」というルールをつくって、これを政府(公儀)が承認しています。例えば、基準を下回る品質のものは売らない。偽物の販売や不正転売をしない。適正な価格範囲で販売する。きちんと手数料(冥加金)を納入する。などです。

 

ちょっと面白いのは、新規参入者が「仲間」に入ることはあまり拒んでいません。ルールに違反した者は業界から排除するのですが、永久追放でなく期間を決めた資格停止です。更に、違反者によって顧客に被害が出た場合は、業界として連帯して責任を負ったりしています。

何だか、現在以上に合理的なルールですね。

 

現在でも、社会に受け入れられない振る舞いをした企業は処罰を受けます。事業の継続は困難になります。ときには経営者が逮捕されたりの制裁を受けます。しかし普通は社会的制裁で、個人に直接な痛みが薄いです。

 

江戸時代はもう少し乱暴で、怒った民衆から店が打ち壊しにあったりします。奉行所のお裁きも”磔獄門”とまでならなくても、叩かれたり責められたりしそうでかなり痛そうです。

もちろん人権問題ですし、多くの冤罪もあったと思います。しかし、直接の痛みを伴う厳罰は誰しも嫌なので、それなりに抑止効果も高かったのでしょう。