ひじきの鉄分が九分の一に減った

昨年の暮れに文部科学省の「日本食品標準成分表」が改訂されて、ひじきの鉄分が100g中55㎎から6.2㎎と、およそ九分の一に減りました。

 

簡単に言えば、昔風に鉄釜で乾燥ひじきを煮れば、100g中58.2㎎の鉄分が含まれる。しかし、現在では主流のステンレス釜では6.2㎎しか含まれないということです。

いくら鉄鍋とはいえ、ひじきにここまで鉄分が多く移動していたというのは驚きです。

重さ3㎏の鉄鍋で毎日1㎏のひじきを煮たら、1年間で約0.2㎏の鉄分がひじきに移るということですね。鉄鍋から溶け出た鉄の全量がひじきに含まれるのだろうか?なかなかに意外な話でした。

 

人にとって鉄はとても重要な元素です。貧血の原因が鉄分の欠乏にあると解明したのは、古代ギリシャ時代の医学の父:ヒポクラテスです。実際に、貧血患者の治療に鉄を処方していたそうです。

 

人の身体には、約3~4gの鉄が存在して、毎日20㎎くらいの鉄を摂取しています。赤い血液の血色素ヘモグロビンに鉄が含まれていることが知られています。ヘモグロビンは酸素を肺から身体のすみずみまで運ぶ役割をします。また、鉄は身体の中にある多くのタンパク質や酵素の構成要素であり、生体機能に深くかかわっています。鉄は必須の元素です。

 

ちなみに、ホウレンソウは、100g中3.7㎎の鉄を含んでいます。しかし、栽培する根元に鉄くぎをばらまいておけば、鉄を吸収して鉄分はぐっと増えます。

 

植物工場ビジネスでも、鉄分強化した機能性野菜の生産は重要なテーマです。カルシウムを増やすとか、カリウムを減らす(腎疾患の方向け)など、機能性野菜の生産が可能になるのが、植物工場の利点の一つです。

将来は、ひじきや海苔などを生産する完全閉鎖型藻類工場ができて、鉄分強化した機能性藻類が食卓に届くようになるかも知れません。