企業が、BCP策定の一環として工場などの建物で耐震補強を計画される場合があります。
BCP策定をする場合に、災害事象から考え始めると不具合が生じます。
例えば地震です。
山口県では、東南海地震や安芸灘ー伊予灘地震など比較的大きな地震が起こったとしても、最大深度6弱の可能性はほとんど無いと言われています。
このため、山口県で心配しないといけない地震は、東日本大震災のようなプレート型ではなく、阪神淡路震災のような活断層による直下型地震です。
宇部市では大原湖断層系の宇部東部断層+下郷断層が該当されます。
この断層で、マグニチュード7クラスの地震が発生した場合には、最大で2兆5千億円の被害が出ると試算されています。自治体などでは、この地震を想定したBCPをつくります。
やっかいなのは、活断層型の地震は「いつ起こってもおかしくはない。」のですが、向こう数万年起こらなくても不思議ではないことです。宇部市の活断層でも、最後に動きがあってから少なくとも8500年は経過しているそうです。
BCPで、活断層が動いて震度6の地震が起こったときの対応と考えると少し過剰な反応になります。また、地震の規模がM8でなくM7であるという保証もないのです。東日本震災のように、M9で20mの津波という想定も実際は不可能です。
そこで、BCPを考えるときは、災害の事象では無く、会社の機能喪失(あるいは損傷)から考えていくとよいです。
人員 : 最も大切なのは人命です。避難と安否確認を考えます。
建物 : 破損して使えなくなったときどうするかを考えます。
(どんな地震でも絶対に破損しない建物・・と考えるのは無理です。)
設備 : 建物と同じですが、危険物を使用している工場などでは漏えいや爆発対策が必要です。
情報 : システムを堅牢にすることより、情報の保全の手順を整えることです。
などなど・・。
つまり、災害の事象は「想定外」が起こり得ます。直下型地震と隕石の落下でどちらが確率が高いかもわかりません。
それに対して、機能喪失への対応であれば、「想定」可能です。費用対効果を見極めて、経営戦略として決めていきます。