工場が儲かる切り札はレイアウトの改善です

 化学品製造のような装置産業を含めて、工場の収益はレイアウトの改善が効果的です。


 生産品によって事情は異なるのですが、長年の経緯で完成しているレイアウトを変更することには抵抗が大きいものです。結果として、何年・何十年も変わらないレイアウトでの製造を続けているケースはたくさんあります。


 私の携わっていた化学工業では、高い反応塔・長い反応炉・大きな洗浄装置・・など重厚長大設備を使うので、基本の配置を変えることに一層逡巡します。

 ところが、生産する製品はどんどん進化していきます。

 結果として、建物を跨ぐようなコンベアなどの輸送機が付いたり、監督が離れた複数の制御室を兼務したりといったことがおこります。そういった状況は慣れてしまうと当たり前になって、実は収益を阻害していることに気が付かなくなります。


 機械加工や組み立てなどの工場では、レイアウト変更の機会は多いと思いますが、忙しい工場ほどちょっとした改善で満足しています。

 実は、改善活動の一つの盲点は、従前の状態からいくらの改善が為されたか(効果金額です)で評価してしまうことです。このため、改善活動では、理想状態とか論理的に導かれるミニマムコストとの差異を意識し難いのです。(マネジメントシステムでは「継続的改善」とか「スパイラルアップ」とか言います。)


 さて、レイアウトの改善と言ってもいろいろあります。

 究極は、工場の立地そのものを改善することです。

 例えば、山口の工場で大型機械・新潟の工場で中型と小型機械を製造していた会社が、山口で小型・新潟で大型と中型の製造に変更するとか、山口の工場は閉鎖して熊本に新工場を建設するとか、大きな改善です。これは、数年単位の時間が必要です。

 小規模になると、工場敷地内の建物(工程)配置を変更するとか、使用する倉庫や貯蔵エリアを入れ替えるとか、作業場の機器配置を見直すなど、日常的な改善活動があります。


 さて、なぜレイアウトの改善が儲かる切り札かと言えば、モノやヒトや情報、それにエネルギーの流れの改善だからです。

 全てのものは、流れていく過程で劣化したり、漏れたりします。また、流れをつくるためには大きなエネルギーが必要です。レイアウト改善で大幅な省エネを達成できた例は数多くあります。


 仮に収益改善が確実と思っても、滔々と流れている大河の流れを変えることは、なかなか思い至りません。何かのきっかけが無いと踏み切れないものです。

 ただ、収益が悪化した会社にも、そのきっかけは必ずあったのです。見落としただけです。

 機会(チャンス)を適切に掴んで、ゼロベースの澄んだ気持ちでレイアウトを考え直してみることです。「劇的な改善」とか「ジャンプアップ」とかが達成できる可能性は高いと思います。