COP21 「議定書」断念の見通し

 報道によると、パリで開催中のCOP21での議定書締結は断念の見通しになったとのことです。


 毎日新聞のweb版) 

 パリで開催中の国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で、京都議定書に代わる2020年以降の地球温暖化対策の新ルールは、「議定書」という形式での合意は見送られる見通しとなった。各国の温室効果ガス排出削減目標の達成義務化についても見送られることが確実で、参加国に対する新ルールの法的拘束力が限定的になるのは必至だ。

 

 少し予想はしていたのですが、世界中の関係者が数年前から準備をしていたパリ会議ですから、とても残念です。フランス政府のファビウス議長(外務大臣)の尽力に期待します。

 日本にも目標数値の提出を遅らせた責任があります。しかし、アメリカと中国という2大排出国が無責任な態度を続けるのは残念です。

 日本でも(最近は、さすがに減ってきていますが)未だに温暖化は大した問題ではないとか言っている、悪魔のような偽科学者や文化人?もいます。

 地球上には、人類を含む生物の生存より優先される便益はないはずです。

 

 そもそも、国際間で約束を交わすのは難しいことです。

 一般には、約束は「条約」という形で結ばれます。しかし、約束を交わすのにはいろいろ利害が対立する場合は、合意できる範囲で方向性だけを決めた「枠組み条約」を交わします。

 この「枠組み条約」を基礎にして、細かいことを「議定書」で約束するという段取りです。

 

 「国連気候変動枠組み条約」は、23年前の1992年に採択され、1994年に発効されました。

 そこで決まった 方向性は、「各国は、気候変動の原因を予測し、防止し又は最小限にするための予防措置をとる。」ということだけです。

 

 この枠組み条約をもとにした議定書が、1997年に京都で開催された第3回締約国会議(COP3)で

合意された「京都議定書」です。このとき「日本・米国・EUが1990年対比2008~2012年に温室効果ガスの排出量をそれぞれ6・7・8%削減する」という約束を結びました。さらにこのときに、京都メカニズムと言われる、排出権取引の手法も規定されました。一方で、京都議定書では中国などの発展途上国は拘束されなかったという大きな問題が残りました。

 

 少々ひいき目かも知れませんが、当時の日本政府は議長国として物凄い成果を上げたと思います。今から18年前のことで、地球温暖化に対する認識も不十分で、現在の何倍も偽科学者たちが闊歩していた時代です。経済手法まで取り入れた「議定書」が交わされたのは大きな賞賛に値します。

 

 この京都議定書採択に最も大きな役割を果たしたのは、大木浩議長(後に環境大臣・当時は環境庁長官)です。残念ながら、先月13日にお亡くなりになりました。


 ちょっと、横道なのですが、地球の環境に対する温暖化に次ぐ大きな課題は、生物多様性の確保です。「生物多様性条約」の議定書は、2010年のCOP10で締約された「名古屋議定書」です。

 大荒れになった会議を取り仕切って、ほとんど不可能だろうと言われた議定書を作り上げたのは、当時の松本龍環境大臣です。その後、東日本大震災が発生して、復興担当大臣になってからの不適切発言で辞任されましたが、功績は高く評価されるべきです。

 つまり、現時点で地球環境の2大問題に関する国際的な約束は日本で産まれたものなのです。