会社で注目されていない製品の品質保証

製造業の場合、社内で注目されずに生産をしている製品が何かしらあるものです。

 

根強い需要があって、数十年前から同じ仕様で生産している。近年は売上高が徐々に減ってはいるが、利益が出ないほどではない。日本でも生産しているのは当社を含めて数社になっているので値下げの要請もなく、材料価格が上がったときは値上げもできた。品質は安定していて、クレームなどの連絡も最近は皆無だ。といった製品です。

 

こういう製品で思わぬ失敗が起こると、対処は非常に難しくなります。

 

「X社は機械部品メーカーです。空調機械用の金属製機能部品を製造しています。

この部品は、自社で開発した技術を使っていて、一時期はドル箱製品でした。長年に渡って同じ工程・同じ仕様でつくっています。最近は販売量が減ってきたので、社長は来年で生産を終了にしたいと言います。それでも、お客様がある限りは生産は続くだろうと工場の人は思っています。

 

この部品は、製造の最終工程で予備洗浄・精密洗浄・仕上洗浄の3段階の洗浄をおこないます。仕上洗浄後の部品は一定の頻度で抜き取り検査されて、洗浄不良があれば洗浄工程に差し戻されます。また、洗浄工程は2か月に1度の頻度で全停止させて、機器装置の点検・整備を実施しています。」

 

先日、この工程で2か月点検がありました。そのときに、装置の不良が見つかりました。

洗浄液循環配管の自動弁(コントロールバルブ)がうまく作動しておらず、所定の洗浄ができていない部品があったと思われます。

 

そこで、ベテランの生産担当者は、先ず自動弁の交換を指示しました。次に、抜き取り検査の記録を確認したところ、検査結果に異常は発見されませんでした。そこで、担当者は、これまでの製品には不具合はなく、自動弁を交換して対策は完了としました。

 

しかし、数か月後に大変な市場クレームが発生しました。なんと最終製品に取り付けた部品が破断する事例が多発したのです。原因は洗浄不良による強度劣化でした。抜き取り検査では、洗浄が良好か否かを部品の端部を観察して確認していました。ただ、検査するのはこの観察だけで、部品の破断強度を測定していません。

長年に渡って、これで問題はなかったのです。・・・

 

ISO9001などの品質マネジメントシステムでも、継続的改善を考慮していないこのような製品をレビューの対象にするのは困難です。A建材の事例にも似たような意味があります。

会社の経営者も営業担当者も誰も気に掛けていない製品です。品質保証部も、何年も苦情もトラブルもなければ、作っていること検査していることも忘れてしまいます。

 

PQCDサイクルの「C」では、今生産している全ての製品について、品質保証の再点検をする機会を持つことが必要です。

その際に、どれだけの緊張感を持って対処できるかが成功の鍵です。