情報社会に貢献している数学

数学は多くの分野で使われるのですが、進歩が一方通行になるのが課題なのだそうです。

 

現代の生活に不可欠なのが、パソコンやスマホでのインターネット通信です。

そこでは、情報セキュリティが重要な要素であることは当然です。ハッカーによる不正アクセス・個人情報の漏えい・コンピューターウイルスへの感染・・などがしばしばニュースになります。

この情報セキュリティの根幹にあるのが暗号化技術であり、近年では主に数学の領域です。

 

 

情報の送り方は、① 送り手が情報を暗号化鍵で暗号に変換して送る。 ②受け手が暗号を復号化鍵で情報に変換して使用する。という手順です。

1970年代までは、この暗号化鍵と復号化鍵がおよそ同じものだったので、鍵をしっかり管理していないと暗号が漏れますし、そもそも不特定多数の人に情報を送ることができませんでした。

 

そこで1970年代に登場したのが、RSA暗号です。(RSAは開発者3人の名前の頭文字)

RSA暗号では、受け手に送る情報の暗号化鍵が公開されています。不特定多数の人が情報を暗号化して受け手に送ることができます。受け手の復号化鍵は、暗号化鍵と同じ法則で作られているのですが他人にはわからない秘密の鍵です。

 

この鍵に使われているのが整数論の定理で、大数の素因数分解が難しいことを利用しています。具体的には、受け手は数百桁の素数を二つ選びます。素数は無限にあって、ある数が素数かそうでないかの判定は容易にできます。

この二つの素数の積をAとし、二つの素数から別の簡単な計算で求められる数をBとします。

このAとBを公開した暗号化鍵として使ってもらいます。

不思議なことに、暗号化した情報をこの暗号化鍵で逆にさかのぼることができないのです。なぜ?

 

復号化鍵も二つの素数から計算で求められるのですが、公開されているA(素数の積)やBの鍵から求めるには数百ケタの大数の素因数分解が必要になります。決して不可能ではないのですが、従来のコンピューターでは数年単位の時間がかかるので事実上不可能ということでした。

現在では、数学の進歩とコンピューター性能の向上があるので、RSA暗号は安全ではなくなりました。そこで、新たな暗号が数多く提案されています。

 

情報セキュリティーの向上も、破壊も、ともに数学の進歩が大きく貢献します。しかし、情報技術など工学技術の進歩が数学の進歩のほうにあまり貢献しないことが悩みなのだそうです。

工学や理学の世界から、既存の数学で証明できないような事象が提示されることを、数学者たちは待っているのだそうです。 

現在、証明できているということすら理解できない私からすれば、くらくらする話です。