初めての中台首脳会談が開催された

今日、中国共産党と台湾国民党の首脳による史上初めての会談がおこなわれています。

 

現時点では、会談の結果は不明ですが注目される出来事です。

 

台湾には前職の時代に20回くらい訪問しました。台湾の会社と共同で大陸の会社を相手に訴訟をしたことや、日本の会社のタイ工場建設を受注した台湾の会社の下請で苦労をしたことなど、いろいろありました。感心するのは、台湾のビジネスに関わる皆さんは組織の規律がきちんとしていて、とにかくよく働きます。

 

さて、今回の会談の目的については、台湾側の事情から見た報道のほうが多いようです。

大まかに言えば、国民党の馬英九総統の任期が来年1月までで終わる。馬英九政権の8年間は親中国施策をとってきたが、経済的にも政治的にも成功とは言えない。次の総統選挙では中国共産党と距離を置く民進党の蔡候補が圧勝し、国民党の朱候補が惨敗するのは確実な情勢になっている。この情勢を押し戻すためあるいは民進党政権になっても親中国政策を継続するためにトップ会談を熱望した。これに対して、民進党支持者は反発をしている。

 

一方で、中国共産党の習近平主席の側はそれほど積極的でない印象です。台湾のトップと初めて会うことは実績になるし、共産党にとって悪い話ではないので応諾した。

といったところが報道の概要でしょうか。

 

ただ、大陸と台湾の関係は、なかなか複雑なように思います。

戦後の台湾は「台湾の奇跡」と言われるほどの、工業化による経済発展を遂げました。私たちが社会に出た1980年代には、石油化学や半導体産業を中心にしたグローバルな経済大国でした。

一方で、大陸が力をつけていくなかで国際政治のなかでの地位が揺らいでもいました。そのなかで台湾国民党政府は自ら民主化を果たしました。稀有なことで、素晴らしいことです。

 

さて、1989年の天安門事件で大陸は大きなダメージを負いました。それに救いの手を差し伸べたのは台湾からの経済投資でした。その後に、海峡にミサイルを撃ち込まれることになりますが・・。

2000年前後から、「社会主義市場経済」を発明した大陸の経済発展は覇権主義へとつながり、民主台湾と大陸の関係は遠くなっていきました。そのなかで、2008年の世界不況では、中国も大きな影響を受けましたが、それを下支えしたのも大幅に増えた台湾からの投資でした。

 

台湾の人口2300万人ですが、九州ほどの小さな島国です。工業国である台湾ですが、自国に開発できる場所があまり残っていません。大陸に投資をして製造拠点を持つ必要があります。

その投資先は、華東(上海市・江蘇省・浙江省)と華南(広東省・福建省)に集中しています。

実は、この投資はビジネスの意味だけでなく、清朝の時代に大陸から逃れてきた人々にとっては故郷に錦を飾るという側面があるのだろうと思います。このあたりも中台関係の複雑なところです。

 

ところで、2010年には年間130億ドルだった台湾から大陸への投資も、2014年には80億ドルほどに減っています。大陸への外国からの投資は、政治・軍事的な理由があって、大口だったアメリカと日本からのものが大きく減っています。短期的な回復は難しいように思います。

現時点で、大陸への投資を増やしているのは、韓国と英国の二か国になっています。

経済の減速がささやかれる大陸にとって、技術やノウハウの移転がスムーズにおこなえる台湾からの投資はまだ必要です。今回の会談は、大陸にとっても実は大切なものになるかも知れません。

 

私が台湾に行き始めた8年前でも、まだ中国と台湾の直接の往来はできませんでした。例えば、台北から上海に行くのには、香港などを経由していました。

ところが、今は中国人の観光ツアーが台湾に押し寄せていて、爆買いして帰ります。日本と同様にマナーに関する摩擦も強いのですが、やはり立ち向かい方が違います。わけのわからない比喩ですが、大阪のおばちゃんと応対している地方の観光土産物店のおっちゃんのノリです。

 

いろいろ複雑で近すぎて難しい中台関係ですが、それぞれの国民の権利を守るかたちで、平和に発展していくことを期待しています。