道徳なき経済は罪悪である

二宮尊徳の言葉ですが、以下「・・経済なき道徳は寝言である」と続きます。

 

「意図的におこなわれた不適切な会計処理」(本来はこれを「粉飾決算」と言うのですが)に関連した記者会見に臨んだ社長さんはとても悔しそうでした。

経済と道徳は一体なもので、どちらも重要で、どちらかがあればよいということではありません。

 

社長が会社業績の目標を指示するのは当然のことで、「無理な目標」を押し付けたのが原因だと言う報道に容易には同意できません。数字にこだわることも当然で、「数値管理なき経営は罪悪ですし寝言です」。公開企業であれば、まさにそうです。

この事件の報道で変な世論がつくられて、日本の経営者が委縮してしまい、今年の目標は自社の実力では難しい「チャレンジ」だろうか、と考えるようになったら経済は停滞します。会社の経営において、「チャレンジ」や「必達予算目標」は必要です。

 

今回の問題は、粉飾決算を社長が直接的にあるいは間接的に指示していたということです。第三者委員会の報告では、「当期利益至上主義」にこだわるあまり決算を飾るようになったということです。ここに本質があります。

 

企業は会計を軽んじてはいけません。中小企業や個人事業でも同じです。大企業では、取引の範囲が広くなり、子会社や関係会社が増えていくので、会計は想像を絶するほど複雑になります。

中小企業の会計の要諦は、会計をいかにシンプルにしていくかです。

大企業の複雑な会計も細かくしていけば中小企業会計の総合計みたいなものですから、それぞれはシンプルにしていくことができます。シンプルにするというのは、よい基準を決めて、基準通りにやっていくということです。

当期利益にこだわって、シンプルでない会計をすることは避けるほうが無難です。これは、大会社でも中小企業でも同じです。

 

繰り返しですが、大企業でも中小企業でも、数値管理なき経営はありえません。

ここで、気にしなければならないのは、企業の成長段階や個別の事情によって管理しなければならない「数値」が異なることです。

立ち上げたばかりで成長過程の企業では、顧客を増やして売上高を上げていくことが目標になります。当期利益やキャッシュフロー、内部留保を無視して経営することもあり得ます。

 

一方で、成熟段階にある大企業ではどうでしょうか?

「当期利益(の前期からの増加額)」が適当な管理すべき数値であったかということです。

 

最後に、企業規模が小さいほど会計を飾るのは難しくなります。

銀行が見ているのは「資産」の純額と「将来性」だけです。仮に会計上で債務超過であっても、大した問題ではありません。

減価償却を止めて固定資産の額を多めにしたり、破綻しているゴルフ場の会員権をそのまま資産計上していたりして、無理に飾ってもすぐわかります。むしろ、資産価値を保守的に適正に評価している会社のほうが、将来性があります。(尚、税法の償却期間は一般に中小企業には長すぎます。)

シンプルな会計と、段階に応じた適正な数値管理を心がけてください。