菓子屋横丁の火事~商店街の防火対策

先日、川越の菓子屋横丁で煎餅屋さんから出火して、1人死亡5棟全焼の火事がありました。

 

火事の映像を見ますと、火元の煎餅屋さんは角地に建っています。全焼した5棟というのは、火元の煎餅屋さんとその背後に隣接した1棟、路地を隔てた反対側のお菓子屋さん3棟です。煎餅屋さんの隣の美容院は映像を見る限りでは無傷です。亡くなったのは煎餅屋さんの店主である90歳の男性です。

ポイントは三つ。1)道を隔てて延焼。2)隣の家に被害が無い。3)高齢者の死亡。

 

古い木造建築が密集している市街地では延焼被害の可能性があります。今回の場合は、道幅が3mほどありましたが、2階部分から飛び火をしたと思われます。

風の向きや強さにもよりますが、一般に1階では3m、2階では5mの距離が延焼の恐れがあります。もらい火を免れるためには、2階部分の壁と軒裏を準防火レベルで構わないので防火性能があるものにしておくことが考えられました。屋根は瓦葺のようですから、少額の費用でも対策できていた可能性があります。

 

映像で驚きは、焼け付くした木造建屋のなかにクリーム色の美容室の建物が無傷ですっくり建っていることです。石膏ボードの耐火材の壁が延焼を完全に防いでいます。 

 

火災の被害は年々減ってきています。それでも昨年1年間で出火件数は43,632件、死者1,675人、負傷者6,527人に上っています。今の日本では、とても大きな問題です。

死者1,675人のうち、今回のような住宅火災による死者は1,002人で、このうち7割の693人が65歳以上の高齢者です。この比率は驚きで、高齢者を守る取り組みが求められます。

 

今回は、営業中の昼火事なので関係ないのですが、住宅用火災報知器の設置が義務付けるなどの対策も取られています。一人暮らしや老人世帯の増加もあって、高齢者が迅速に避難できるような工夫がいろいろ提案されています。

 

今回の火災は、菓子屋横丁という観光名所で起きていますから、地元自治体などの損失はかなりあると思います。これほど有名でなくても、各地の商店街などでも同じ心配があります。アーケードを掛けた銀天街で、半分シャッター通りになっているようなところは、思わぬ大火に拡がる危険を感じます。

 

商店街の既存住宅(店舗)の防火性能を簡易的に調べて、ポイントの箇所だけでも改善するような政策もあると思います。耐火構造にするのでなく、消防が到着するまでのほんの10分間でも耐えられれば、大火になるのは避けられるでしょう。