日本の温室効果ガス削減目標は妥当な水準です

日本の温室効果ガス(GHG)削減目標が、2030年に2013年対比26%の減少と発表されました。

 

日本の削減目標として「妥当」な水準だと思います。妥当というのは、「達成は容易ではないが努力を積み重ねれば可能」な水準だからです。

 

日本・EU・アメリカのGHG排出量実績を比較してみます。

(単位は、CO2換算の億トン)

 

 

削減目標: 

日本   2013年対比2030年に26%削減

EU     1990年対比2030年に40%削減

アメリカ 2005年対比2025年に26~28%削減

どこも、実績で最も高いところを基準年にして、削減率を大きく見せようとしています。

 

日本の削減目標は2030年に2013年対比26%削減ですから、3.6億トン削減して10.4億トンにするという目標です。これまでの推移からみて、容易ではないことはわかると思います。

日本は1970年代の石油危機以降の努力によって1990年時点で既にGHG排出水準が非常に低かったので、その後もGHGは徐々に増えてきています。どこが増えているかと言うと、直接的にはエネルギー転換部門(簡単に言えば発電)です。その転換された電力消費を増やしているのは家庭とオフィスです。

 

エネルギー転換では、発電のシェアで原子力が減って石炭が増えています。実は、2005年も原発の点検偽装発覚と宮城県南部地震の影響で原発稼働率が低かった年です。そして、2013年は原発ゼロです。電力消費で言えば、産業部門の省電力は進んでいるのですが、家庭やオフィスではIT機器や空調などが一層普及して電力使用が増えています。

 

しかし、今後15年間で、家庭やオフィスの電力消費を半減することは技術的にも政策的にも十分に可能です。安全基準を満たした原子力利用についての国民合意も進むと思いますので、努力を積み重ねれば可能で、妥当な目標と言えます。

 

さて、EUの1990年対比40%削減という目標がとても目立っています。しかし、数字は大きいのですが、実は日本の目標より達成は少し容易です。概ね妥当な目標と言えます。

それは、EUの1990年実績は、当時はEU非加盟だったポーランドやルーマニアを含んでいます。また、ドイツは東西統一の直後でした。簡単に言えば、東ドイツを含む1990年以降のEU加盟した16か国は、もともとGHGを大量排出していましたから、削減が進んでいると言えます。

また、EU全体で見れば、原子力発電のシェアが増えていことと、ロシアからの天然ガスのパイプライン供給によって石炭消費が減っていることが大きな要因です。

 

今回はアメリカがGHG削減の目標を立てました。オバマ民主党政権の成果です。

アメリカは目標年を2025年と、日本やEUより5年早くしています。しかし、基準年(2005年)の排出量がとてつもなく大きいことや、元々対策が遅れていたことから達成は十分に可能と思います。

アメリカの目標もほぼ妥当なところと思います。