電力改革「発送電分離」は消費者の利益になるか?

たまたまテレビでコメンテーターの方が「電力改革を推進」する話しをされていました。

 

どうしても、マスコミのエネルギー関連の報道や解説は正確さに欠けて、誤解を招くようなものが多くなっています。

 

例えば、電力は(一般家庭など少ししか使わない需要家以外では)2000年から自由化されています。工場でも役所でもどこから電気を買うかは自由に決められます。山口県でも中国電力以外から電気を買っている会社はたくさんあります。

その前段階で発電は1995年に自由化されています。宇部市では、アメリカのエンロンが100万キロワットの石炭火力発電所を建設する計画でした。ご存知のように、この会社は有史以来最大級の詐欺会社で、幸いにも着工前に破たんしました。

卸売も自由化されていますし、電力料金も自由に決められています。

 

今日も「総括原価方式」なので電力会社が利益をいくらでも取れるという妙な話しが出ていましたが、1995年に「ヤードスティック」制度が導入されています。もう20年前のことです。

電力料金は値上げのときは「認可制」で国が統制します。しかし、値下げのときは「届出制」です。電力会社が自由なメニューで下げることができます。大手企業は現時点でも中小企業よりかなり安い値段で電気を調達しています。

 

今国会に、政府が「発送電の分離」を柱にした電気事業法の改正を提案しており、成立する運びです。この改正はマスコミ受けがよいのですが、冷静に考えていかなければ禍根を残します。

 

先ず、申し上げたいのは「電気」というモノはこの世の中に無いということです。『電気を観たと言う人は誰もいないでしょ。電気は「電子の流れ」のことを言うのですよ。』こう言うと多くの人が、電力自由化や発送電分離について、オヤッ?大丈夫かなと気づきます。

 

電気は製造と使用が同時におこなわれないといけません。電気を在庫できません。そして、電子の流し方も重要で、一定の電圧と周波数を維持されていることが求められます。

 

日本の電気は世界でも有数に値段が高いという話をされますが、日本の電気は世界で最も品質が高いのです。「よい品は高い」のは理屈にあっています。

海外の人は、「日本の電気はミネラルウォーター」と言います。停電の心配が無く、電圧変動も周波数変動もとても小さく制御されている電気は世界で日本だけです。アジアの国々はともかく、アメリカやイギリスやドイツでもたまに停電します。電圧や周波数も振れます。日本のモノづくりの高度な品質や生産性、何より安心安全な社会には電気の品質が大きく貢献しています。

 

安かろう悪かろうに一度なってしまうと、取り返しがつかないことになります。加えて、電力自由化や発送電分離のもとで品質を維持しようとすると、電気の値段はどうしても今より高くなります。

 

自由に売れれば売れるほど大口需要家は今以上に大切にされます。当然のことですよね。

つまり中小企業は今以上に不利になりますし、省電力も進んで電気を更に使わなくなる一般家庭の電気代が下がることは理屈のうえではありません。そうなってから、何らかの補助金で補てんすることになれば、その原資はやはり税金です。