デジタル時代の到来がものづくりを変えた

日本のものづくりは「アナログ」で時代遅れと言われますが本当なんでしょうか?

 

VHSビデオは、大方の予想を覆してデジタル記録のディスクメディアにその座を明け渡すまで、30年の長きに渡って日本のお家芸として君臨しました。アナログ製品の最後を飾ったと言えるかも知れません。

 

そもそも、カセットの蓋を持ち上げ、テープをピンで引っ掛けて引っ張り出して、ヘッドに斜めに巻きつけて再生するなどという複雑な仕掛けは、アナログ時代の日本人技術者にしかできなかったと思います。この複雑さ・精緻さを海外の大雑把な人たちは真似をすることができませんでした。

 

 

ところがディスクになると、機械さえ買ってパンと一発プレスすれば簡単にできるようになりました。(すみません。わざと乱暴に書きました。)このため、どんどん海外生産が可能になりました。

デジタル製品である、DRAM・液晶パネル・カーナビ・ソーラーパネルなどはいずれも、商品の導入期~成長期は日本が圧倒的シェアを持っていました。ところが、大量普及期に入ると韓国・台湾・中国などにシェアを奪われてしまいました。

 

日本はデジタル時代に取り残されてガラパゴス化していると言われます。しかし、ものづくりは本質的にはアナログだと思います。デジタルというのは、整数化ですから連続せずにぶつ切りです。1の次は2で、2の次は3です。一方のアナログは「擦り合わせ」技術ですから、2と3の間にも無限の位置があります。

 

つまり、デジタルは科学的に再現性がありません。光電子増倍管の浜松ホトニクスには製造マニュアルがないそうです。世界最先端の製品は、社員の経験と勘(暗黙知)のなかから作られます。

一方で、アナログは技術的に再現が困難です。基礎素材の製造も、オペレーターの経験と勘が働く世界です。元になる原料は自然のバラツキがあり、大きな装置の中で何が起こっているのかをアナログに感じることで、よい商品が再現されています。