重さの計量の厄介さ ・・ 生活でも科学でも

重さを正確に測ることは、生活レベルでも精密科学のレベルでも実は厄介です。

 

生活レベルの重さで、最も厄介なのは水分です。肉や魚を買ったときに内容量(重さ)が書いてありますが、乾燥して水分が抜けると変わってきます。

もう少し細かい電子天秤を使った測定値でも、地球の自転による遠心力の影響を受けます。札幌と那覇で同じ分銅を測ると、(補正しなければ)札幌のほうが約0.14%重く表示されます。空気の密度の影響も受けますから、気圧の変化で測定値が変わります。

 

重さはあらゆる計量標準のなかで、唯一人工物である「キログラム原器」で定義されています。パリの国際度量衡局というところにある、1889年に作られた分銅を1キログラムと定義しています。このキログラム原器は、極めて厳密に保管されていますが、極々僅かずつ軽くなっていることが分かっています。

 

長さも以前は「メートル原器」で定義されていたのですが、同じように経年変化が観測されたので、今は「真空中で1秒の299,792,458分の1の時間に光が進む工程の長さ」と定義しなおされました。これで、長さは時間に支配されるようになったのですが、その時間1秒はセシウム原子のマイクロ波領域の周波数で定義されています。つまり、長さも時間も一応は科学的に再現性がある測定値と言えます。

 

現時点で、原器を基準とする重さや重さを基礎にする力学的な測定値(力・トルク・重力加速度など)には、科学的な再現性がありません。重さを、アボガドロ数あるいはプランク定数に基づく定義に変えようとする動きがありますが、当面2022年まではキログラム原器に基づいて表示されることになるようです。