再生エネ買い取りには送電網の整備が必要です

FIT(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)が曲がり角に来ています。

 

九州電力を初めとして、国内5電力がFITの申請受付を一時的に制限しています。

日本の発電容量は1億6000万KWくらいですが、26年3月末時点で再生可能エネルギーの認可を受けた設備は、120万件・7000万KWにもなりました。

 

「電気は蓄えることができない。」 電気とは電子の流れですから、電気そのものを蓄えることはできません。揚水発電のように水の位置エネルギーで蓄えるか、蓄電池のように化学エネルギーで蓄えることになります。

 

また、「再生可能エネルギーの発電量はコントロールできない。」 太陽光発電の供給量のピークは正午頃で、夕方になると発電量は大きく下がります。しかし、電力需要のピークは夕方にきます。つまり、最も需要が大きい時には十分に供給できません。

 

 

したがって、再生可能エネルギーが電気の供給を増やして、それを受ける需要が不足すると電気の行き先がなくなります。すると、電力の品質低下や停電などのリスクが発生します。

 

そこで、「電気の需要と供給が一致する範囲まで送電網を整備する。」ということが必要になります。広域的に電力の供給と需要をすればするほど、一致しやすくなります。その地域の送電網の容量に余裕を持って且つ連系容量も十分であれば、例えば九州で供給された電力が瞬時に需要のある北海道を補うことができるといったイメージです。

 

しかし、日本では送電連系に二つの課題があります。一つは、東日本と西日本の周波数の違いです。(東は50Hz・西は60Hz)この東京電力と中部電力の連系設備は震災後増強されても120万KWしかありません。現在は、2020年までに210万KWに増強する計画です。

 

もう一つは、日本は列島国家ですから海峡連系があります。関門海峡は架空送電で、上り259万KW・下り55万KW。津軽海峡は海底ケーブルで上下60万KWが連系しています。

 

広い北海道で自然エネルギーで発電して東京に送電すればよいという話もありますが、津軽海峡は国際海峡ですから外国の船も通行します。北海道の電力に東京が頼るようになったら、どこかの船がアンカー(錨)を引き摺って走るだけで大変な事態がおこります。そこで、新たな送電線を青函トンネルに通す計画です。

 

日本全体をひとつの安定した送電網で結ぶというのは重要なテーマです。単に運用容量を上げるというだけでなく、電力の品質を確保すること、供給の安全を保証すること、の両方を考えながら進めなければなりません。