北京市の大気汚染は、毎年国慶節の頃から悪化していって、年明け1~2月が最も酷くなります。
北京市は、10月7日に今シーズン初の「煙霧警報」を出しました。
例年は9月下旬に最初の発令があるので、改善傾向にあるのかなとも思っています。
とは言っても、ニュース映像を見ると、視界が悪くなって、昼間でも自動車が照明をつけて走っています。明らかに健康に影響があるレベルなので注意が必要です。
中国の大気汚染は、明確に季節性変動があり、9月後半から翌年4月までが悪化します。
この理由は、石炭による暖房が原因になっていること。風が弱まって、汚染物質を滞留させること。の二つです。
中国が取り得る、最も手っ取り早い対策は、暖房に使われる高硫黄粗悪炭を良質炭へ替えることです。(ただし、これは日本の石炭貿易における地位を下げることにもなります。)さらに、石油やガスに替えることです。
さて、中国での大気汚染のベースは石炭火力発電所です。放出される大気汚染物質の約20%が石炭火力に由来すると言われています。暖房と同じように、発電所の燃料を、石炭から石油や天然ガス、更に原子力へという動きが進んでいます。
特に、原子力発電は、2012年から2020年までに50基(5800万kw)増やし、2030年には現在の8倍の13000万kwの発電量にする計画です。
こういった燃料転換は華々しくて効果もあるのですが、一方で発電所からの排出物の処理をきちんとおこなわないと本質的な改善になりません。
火力発電所の排ガス処理は結構面倒なものです。
中国電力網の資料によれば、石炭火力発電所の汚染発生原単位(1kwh当たりg数)は、2005年のSOx 6.4・NOx 3.6から、SOx 2.7・NOx 2.6まで大幅に改善されてきました。現状の米国のレベルは、SOx 1.7・NOx 0.7です。
ちなみに、日本では、SOx 0.4・NOx 0.4というレベルです。(中国の6分の1)
現在では中国の石炭火力発電所の設備容量は日本の約5倍ですから、中国からの環境負荷は日本の30倍に上ります。