中小小売事業者を悩ませているのがキャッシュレス決済への対応です。
キャッシュレス決済が普及してきたことで、手数料負担が重荷になっています。地域の中小小売りは、そもそも利益率が低いのですが、この薄い利益から平均3%の手数料を支払うことになるのです。すっぱり、キャッシュレス決済を取り扱わないと決めた店も増えてきました。CMで店主さんに「~じゃいいですぅ~」と言い放つ不埒な客が描かれていますが、店主さんのほうから現金で払えないお客様に「~じゃいいですぅ~」って言えないでしょうか。

キャッシュレス決済のメリットを改めて考えてみなければいけません。
キャッシュレス決済のメリットは、現金を取り扱うことのデメリットの裏返しです。では、現金のデメリットとは何でしょうか?
最も大きい現金のデメリットは、実物を持っていないと使えない。言い換えると、持っている以上には使えないことです。二番目のデメリットは、落としたり盗まれると返ってこないことがある。三番目は取引の記録が残しにくいことがある。といったことだと思います。
海外旅行などでは、一番と二番のデメリットを回避するためにクレジットカードや、昔ならトラベラーズチェックなどを使います。多額の取引を頻繁におこなう法人取引などの場合は、一番と二番に三番のデメリットも加わって、銀行振り込みなどで現金を取り扱いません。
ここで冷静になって考えると、日本国内に店舗を構えて、日本に在住している個人客相手の商売をしている中小小売業では、お客さんにも小売店にも現金のデメリットはほとんどありません。現金(貨幣)は人類の叡智の結晶といえる優れた発明です。現在においても、現金ほど流動性の高い決済方法はありません。
現金決済が優れているからこそ、キャッシュレス決済では支払者に対してポイントの付与だとか、値引きだとかの何らかのインセンティブ(利息)を与えるほかないのです。そして、その
利息の原資は小売業者からの手数料です。
コロナ禍の非接触関係への傾倒も無益だったことが分かった今日、いっそ現金決済一本に絞る方が良いかもしれません。よく考えてみたいところです。