マイナス金利政策解除の歴史的転換で心配が増す

今日、日銀が17年ぶりの利上げに踏み切り、マイナス金利政策を解除しました。

 

報道を見る限りは、この政策転換をやむを得ないと捉える向きが多いように感じます。

しかし、日本の一般国民や中小企業にとっては厳しいことになりそうです。金利のある普通の世界に戻るだけだという意見があります。しかし、金利の無い世界が長く続いてきたので、こちらのほうが普通であるというのも現実です。

 

日銀 植田総裁
日銀 植田総裁

難しいことは置いておいて、金利がある世界というのは、預金がある主体(会社や個人)には有利になり、借金がある主体には不利になります。

 

借金がある主体は、新たな借金をしないように、いまある借金を減らそうという動きをします。

法人であれば、借金が必要な投資には慎重になります。個人であれば、住宅ローンを組むのをためらいます。国際的な資源エネルギー高と円安の影響で、物価が上がり投資採算性が悪化していたのですからなおのことです。

 

雇用者の賃金上昇によって、これからの経済が活性化するという期待も、賃上げ分が住宅ローンの返済に充てられれば水の泡です。持ち家世帯の約50%は住宅ローンを抱えています。逆に、賃金上昇は、会社にとっては支出増加=利益減少ですから事業活動の足枷になります。

 

コロナ禍による経済活動の低迷と、その裏返しでのばら撒き政策によって、中小企業の多くが過剰債務になっています。

今日のテレビに出ていた元大企業の社長は、「そんな中小企業をゾンビ企業と揶揄し、その存在が物価上昇を阻害しているのだから、むしろ淘汰された方がいい」と放言していました。この会社が、そんな中小企業を違法に食い物にして非難された過去は忘れたようです。

 

中小企業としても、簡単に潰れるわけはいきませんから、経費の縮減、資産の売却などを進めて借入金の圧縮に努めます。

それでも、事業継続できない中小企業が出てきそうです。そうなったときに、実はその企業が大企業のサプライチェーンに、不可欠な役割を持っていたことがわかるかもしれません。

 

最後に、借金がある主体にとって不利になるわけですが、日本で最も借金が大きい主体は、もちろん日本国政府です。その額、なんと1290兆円です。

来年度の利払い費は約10兆円ですが、金利が1%上がればさらに13兆円増えます。国の税収が70兆円余りですから、歳出削減が必要なことは言うまでもありません。

 

中小企業であれば、必死のパッチで経費削減に頑張りますが、今の日本政府には、過剰なバラマキを止める気はなさそうです。最終的に、そのツケがどこに回されるか・・。

国民みんなが心配するので、景気浮揚はなかなか難しいように思います。