夫婦別氏制。行きつく先はマイナンバーか?

自民党の総裁選の争点のひとつになったのを、少し喜んでいます。

 

この問題はイメージ先行で、どういう議論をしているのかが国民にはよく伝わっていないと思います。少し強く言えば、故意にぼやかしているような気がしていました。この際、全てをテーブルの上げて議論して、決めればよいと思います。

 

自民総裁選 夫婦別氏の賛否
自民総裁選 夫婦別氏の賛否

日本は「夫婦同氏」を法律で定めています。これは、婚姻するときに夫あるいは妻のどちらかの氏(尚、氏と姓は同じ意味)を選択すると決まっています。

夫が田中で妻が佐藤ならば、婚姻している期間は、夫婦が田中あるいは佐藤の同じ氏を名乗ります。但し、これは法律の中だけのことで、日常生活で通称(旧氏・旧姓)を使うことは、政府も推奨しています。

 

これを婚姻しても、夫は田中のまま。妻は佐藤のまま、別の氏を名乗るというのが「夫婦別氏」という税度です。日本人にはなじみが薄いですが、欧米ではフランスが有名ですが、お隣の中国も韓国も北朝鮮も「夫婦別氏」です。例えば中国の習主席の妻は彭さん、韓国の文大統領の妻は金さん、北朝鮮の金総書記の妻は李さんです。

 

婚姻しても氏を変えないということには、あまり支障はないように思います。日本でも、法的な婚姻関係でない事実婚のカップルはたくさんいます。

多くの国民は同氏でも別氏でも好きな方を選んで構わないという「選択的夫婦別氏制度」には強くは反対しないように思います。

 

ところが、「選択的夫婦別氏制度」を実際に運用する際には決めなければならないことがたくさんあります。ここが、意見のまとまらないところです。

例えば、「同氏」と「別氏」の選択はいつしますか? 婚姻するときに、どちらかを選択すればその後の変更を認めないとする案があります。他には婚姻時には「別氏」を選択していても申し立てによって「同氏」に変えられるという案もあります。また、その逆もあります。

 

「別氏」の多くの国で使われているような「複合姓(氏)」を認めるという案もあります。例えば、香港騒乱で有名になった林鄭月娥行政長官の氏は夫の林と本姓の鄭を複合しています。昨年亡くなったフランスのジスカールデスタン元大統領はジスカールさんとエスタンさんが婚姻した複合姓です。日本の場合は、もともと氏の数がものすごく多いので、複合姓なんかできると婚姻した夫婦一組に一氏(姓)になっていきそうです。

 

 

また、子どもの氏をどうするのかは難問です。「別氏」を選んで婚姻する時点で子の氏を決めてその後は変更できないとすれば、比較的わかりやすいのですが、反対意見が多いようです。

それでは、出生時に夫婦が決めるとするのがいいのかというと、生まれた子の性別やときには障害などの事情もあって争いが起こりそうです。

 

また、最近は、同性婚やLGBTなどで夫婦の婚姻関係も複線化しています。子どもは異性婚の夫婦間の嫡出子としてだけ生まれるわけでもありません。兄弟で別の氏になるとか、子どもの間に何度も氏が変わるというのも好ましいとは言えません。

 

ということで、いろいろ議論していくと、氏とか姓とか言っていないで、みんなマイナンバーでいいじゃないか!なんて結論になりそうです。未来的ですが、ちょっと怖いです。 

どこかで規制をしながら、制度として完成させるには、イメージ先行ではなく、国民の真面目な議論が必要です。

 

☞ 法務省 選択的夫婦別氏制度(いわゆる選択的夫婦別姓制度)について