緩和するイギリスとアラートを出す東京

東京都では新型コロナのPCR検査陽性者が1日に34人出たことで「東京アラート」を出して、行動規制を促すとのことです。

 

イギリスでは昨日(6月1日)も1570人の陽性者が見つかり、111人が亡くなりました。それでも、陽性者も死者数も減少していることから、行動規制を緩和の動きです。学校の休業も解除されてきています。イギリスの主要新聞のweb版を眺めてみましたが、コロナ関連が紙面を独占しないで、アウトドアでの活動が活発になっていることが紹介されています。

 

ロンドン市内の公園(2020年5月)
ロンドン市内の公園(2020年5月)

日本では、新型コロナウイルスの「感染者」の数についてだけが語られます。

 

このことは、三重の意味で誤っています。

一つ目は、「感染者」の数ではなく、PCR検査の「陽性者」の数であるということです。検査の性質上、感度と特異度があります。

さらに、「陽性者」の数で感染の拡大を把握することができないことです。検査対象者がランダムサンプリングで選ばれていないので、陽性者が多いことと感染が拡大しているということには因果関係はありません。感染拡大のエビデンスにならないわけです。

 

二つ目は、「陽性者」であっても「患者」ではないということです。無症状あるいはコロナウイルスによる症状のない人が多いのです。

三つ目は、新型コロナ感染症の病原性が、日本に住む日本人にとっては、強く恐れるほどの脅威ではない、ということが分かってきています。

 

参考に、イギリスの状況を、イギリス国立統計局のwebサイトから、グラフを2つだけ載せて紹介します。日本の状況と比較してみてください。

 

6月2日に公開された最新版からです。英国国立統計局は週に1回の頻度でまとまった統計データを公開しています。


英国統計局 新型コロナ(2020.06.02版)図1
英国統計局 新型コロナ(2020.06.02版)図1

 

図1です。英国では週毎の死者数を翌々週に公開しています。<日本の総務省統計局は月毎の死者数を翌月末に公開です。>

 

グラフの最新が2週間前の5月22日(金)で終わる週です。点線が、その週の死者数の過去5年間の平均です。今年の死者数が大幅に超えていること、死因が新型コロナ感染症であることを示しています。

 

イギリスで新型コロナ感染症の死者数がピークだった、4月11日~17日(第15週)でみると、過去5年間の第15週の死者数は最小9,029人~最大11.640人で平均10,497人でしたが、今年は22,361人です。超過死亡が発生しているわけで、このうち8,758人が新型コロナ感染症が要因で亡くなったとされています。例年と比較した超過死亡が、1日あたり1000人とか1500人とか、あるわけです。

 

英国統計局 新型コロナ(2020.06.02版)図3
英国統計局 新型コロナ(2020.06.02版)図3

図3です。濃紺が全ての死者数で、黄色が新型コロナ関連の死者数です。

死者の50%が85歳以上の超高齢者です。

75歳以上の後期高齢者が80%です。

65歳以上の高齢者で91%です。

要するに、新型コロナで亡くなる方は主として高齢者です。

 

再び、4月11日~17日(第15週)でみれば、85歳以上の超高齢者の死因の25%が新型コロナ感染症で、65歳以上の高齢者に広げても20%にもなります。

 

多くのイギリス国民にとって、新型コロナ感染症が身近な問題として、十分に認識されるのは当然です。


日本では、いまだに科学的根拠のない「PCR検査陽性者の数」、それもppm単位の小数だけが話題になっているのがおかしいと思いませんか? 患者の症状や死に至る状況こそが、真実であり重要です。

 

新型コロナウイルスに感染しても大半の人は無症状か軽症で済みます。風邪と同じです。

重症化したり死に至るのは高齢者で、既往症などのリスクがある人です。柔道で言えば、合わせ技一本負けです。

高齢者になること=年を取ることを避けることはできません。しかし、リスクを避けることはできます。イギリスの統計を参考にすれば、『喫煙をやめる・やめさせる』、『糖尿病の患者の受療率を上げる』の2点をするだけでも、重症化率をかなり下げられます。

 

新しい生活習慣より、社会的な便益は大きいですから、こういうキャンペーンをしたほうが、よくないですか?少なくとも、事業主さんは従業員に働きかけてもいいと思いますよ。