世界大恐慌に耐える~コロナはきっかけ・本丸はシェール

リーマンショックを体験したものとしては、現状に既視感があります。

 

2008年9月。アメリカでは低所得者向け住宅ローン(サブプライムローン)の利⽤が増えていた、多くは住宅価格の上昇を前提としての返済計画だった。ところが、住宅価格が下落したため返済不能となった⼈が急増したので、サブプライムローンの多くが不良債権となり⾦融機関の財務内容が悪化し、大手投資銀行のリーマン・ブラザースが経営破綻しました。

 

リーマンショック
リーマンショック

リーマンショックは住宅ローンへの投資が焦げ付いて、投資銀行が経営破綻したことに端を発して信用不安が起こったことです。その不安は全世界に広がり、深刻な不況というか経済活動の停滞となり、私自身にとっても激甚な影響がありました。

当時のアメリカはブッシュ(子)政権下にありましたが、2008年11月の大統領選挙でブッシュの後任だったマケインがオバマに敗北しました。

 

アメリカ大統領選の時期が符合したのは単なる偶然ですが、共和党のトランプ大統領の1回目の任期が終わりに近づいています。

当時、リーマンショックからの回復が大きな課題であったオバマ政権は積極的な経済・財政政策を展開しました。この結果、アメリカは2009年以降先進国中では最も高い経済成長率を達成しています。2010~2016年の平均ではアメリカの成長率は2.09%で、ドイツ1.97%・イギリス1.96%・日本1.44%を超えています。

 

しかし、トランプ大統領にとってはオバマ政権のやり方は手ぬるいと感じられました。そこで、中国・中東をはじめ世界各国と攻撃的も言えるやり方で経済政策をおこない、結果としてこの3年間のアメリカ経済は年率2.5%程度の成長をみせました。

 

特に、オバマ政権では環境破壊を引き起こすとして抑制的だったシェールオイルと天然ガス産業への規制緩和をおこないました。アメリカはサウジアラビアやロシアを抜いて世界最大の原油生産国となり、エネルギー貿易収支が黒字(つまり輸出国)になっています。

 

革命とも称されるシェールですが、多くのシェール企業は2018年頃にようやく黒字化して、今から儲けるという時期でした。中東の原油採掘と比べて資源密度が低く事業規模が小さいうえに設備投資や生産コストが高いからです。損益分岐点は原油価格で平均50ドル代後半と言われていました。

 

新型コロナによる経済の停滞によって原油需要が減少したことで、原油価格が弱含みになりました。OPECは原油価格維持のための減産を計画しましたが、アメリカと並ぶ3大産油国の残る2国、サウジアラビアとロシアがこれに応じず、逆に増産の意向を示しました。

これはシェール企業、アメリカ、トランプ政権への宣戦布告です。

 

原油価格が30ドルを割るようなことが起きています。サウジは原油生産コストが元々安いので一気呵成にシェア拡大を目論見もありますが皇太子の問題があり、ロシアは憲法改正によってプーチン大統領が2036年まで権力を握る可能性があります。

 

リーマンショックの住宅をローンで購入した低所得者層がシェール企業に当たります。

シェール企業が負債返済に窮する事態が容易に予想されます。エネルギー事業を主な収益源とする共同投資事業形態 であるMLPインデックスは2月24日に20ドルを切って、2週間足らずの一昨日は9.84ドルまで下げています。

さらに、サブプライムローンに似た低格付け企業向け融資レバレッジドローンは、元本回収が怪しくなって運用成績が急激に悪化しています。これは日本の多くの銀行も保有していますから、アメリカの話とばかり言えません。

 

シェール企業の破綻が連鎖し、信用不安が起こったらリーマンショックを超える大恐慌の心配があります。そんなことにならなければいいですが、備えだけは考えておくべきでしょう。

最優先は、手元現金の確保です。