このところの事件報道で、多くのコメンテーターの意見が厳罰化に傾いているのが不安です。
意図を持って他人を傷つける犯罪ではなく、過失から起こった事故や、贈収賄など経済犯罪、覚せい剤事犯などでも、私たちは「決して許さない」という風潮です。ワイドショーは、怒りの感情を強調して視聴者を煽り立てることで視聴率が伸びます。そして、実際の司法の現場でも厳罰化の流れは進んでいるようです。
最初に確認しておかなければならないのは、日本は安全な国であるということです。
厳罰化を進める風潮には、日本の治安が悪化しているとか、これからの日本は安全が揺るがされていくという、少々誤ったメッセージが背景にあります。
例えば、在日外国人の増加が治安の悪化につながるという不安は、事実としては確認できていません。確かに、日本より在日外国人の母国は押しなべて治安が悪いのですが、日本に来て住んでいる外国人に限っては犯罪の頻度は日本人とさして違いません。
最新(平成30年)の犯罪白書によれば、「刑法犯の認知件数は,平成14年(戦後最多)をピークに15年連続で減少。平成29年(前年比8.1%減)は戦後最少を更新(平成14年の約3分の1)」となっています。
統計の上で増加しているのは、児童虐待・DV・ストーカーなどがありますが、これは発生件数が増えたというより認知度が高まった影響が大きいでしょう。また、特殊詐欺は大きな問題になっていますが、高齢者人口の増加が背景にあります。
もともと世界でも最も安全な国の一つであった日本は、年々その安全性を高めています。厳罰化が安全性を高めているわけではないと思います。
また、「罪を憎んで人を憎まず」、懲役刑の場合更生が認められれば、刑期を満了せずに仮釈放になることがあります。この仮釈放も近年は大きく減っているそうです。まじめに更生に努めても満期まで釈放されないというのであれば、再犯の危険を増すようです。
刑罰均衡を外れるような厳罰化は危険な感じがします。
最後に、憲法31条に「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない」とあります。これは、法律の定める手続きによれば、生命を奪われる(=死刑になる)という意味にとれます。