「いだてん」なぜ人は走るのか

「這えば立て立てば歩めの親心」と言いますが、歩き始めた子供はすぐに走りたがります。

 

大河ドラマ「いだてん」は1912年(明治45年)のストックホルムオリンピックで日本人初のオリンピック選手となった「日本のマラソンの父」金栗四三の物語が続いています。なぜ人は走るのか、それも長い距離を走りたがるのか、ちょっと不思議ですよね。

 

ドリコス走
ドリコス走(古代オリンピックの長距離走)

 

アフリカ大陸で猿に似た祖先から進化した人類は、それまで住んでいた森・木の上から、サバンナ・地上へ進出します。

地上での生活では、そこに棲む動物を狩ることになります。このため、長い距離を走る能力を持った者(アウストラロピテクス)が有利です。

 

私たちの祖先は、進化の過程で骨格と筋肉などの身体を走ることに適したものへと変えていきました。なかでも、人類の最も大きな特徴が極めて多い汗腺です。

人類は、冷帯に住む人種で約180万、日本人では約230万、熱帯に住む人種は約280万という膨大な数の汗腺を持っています。

 

他の哺乳類ではネコが足の裏に汗腺を持つくらいで、イヌもゾウもカバにも汗腺はありません。長い時間の運動には、体温の上昇を避けなければいけないので、人類ほど長い距離を走ることができる動物はありません。

シカなどは人間より速く走ることができます。しかし、人類は長い時間走ることができて集団で狩りをしますから、獲物を追い回して疲れさせて捕獲することができます。こうして、人類はサバンナを支配して、発展をしていったのです。

 

「直立二足歩行が人類の進化を促した」という説は誤解だったようです。走ることは歩くことの延長ではなく、走ることが人間が人間である所以でした。ただ二足歩行するだけでは、人類の進化は望めなかったのです。

 

令和の天皇陛下は走ることがご趣味だそうです。

赤坂御料地のなかを月に100㎞も走られることもあるとのことです。パラランナーの伴走を務められたり、4年前には皇居の周りを一般ランナーと一緒に走られたりもしました。皇居一周では5㎞のコースを27分余りで走られたそうです。本格的なランナーですね。

来年は東京オリンピック・パラリンピックもあります。走る天皇陛下は魅力があります。たまには、その姿を伝えていただければと思います。